2022 年 20 巻 1 号 p. 55-63
自閉スペクトラム症(以下、ASD)の示す行動障害への支援において、障害福祉従事者の重要性が指摘されている。先行研究では、従事者の担う役割や重要性については検討されているが、従事者がどのようなことに困難さを感じているかについては十分に検討されていない。本研究では、障害福祉従事者が認識している行動障害のあるASD支援の困難さについて明らかにすることを目的とした。その結果、4つの困難さが示された。第1に、行動障害のあるASD支援従事者を対象とした質問紙調査の結果、88.2%の従事者が支援上の困難さを感じていた。第2に、障害福祉事業種間における支援の困難さの差を検討するために一元配置分散分析を行い、施設入所支援における支援の困難さに有意な主効果が認められたため、事業種間の差を確認するために多重比較を行ったところ、施設入所支援と児童発達支援との間に有意差が認められた。第3に、困難さを感じているとの自由回答を分析した結果、【支援のあり方】、【支援体制への葛藤】、【障害福祉サービスや制度のあり方】という3つのカテゴリーが生成された。第4として、必要とされる支援や施策の自由回答を分析した結果、【支援のあり方】、【調査と研究】、【障害福祉サービスと制度】という3つのカテゴリーが生成された。以上、障害福祉従事者が認識している困難さには、行動障害への支援だけでなく、支援体制や制度上の課題も含まれていることが明らかになった。