2023 年 20 巻 2 号 p. 13-21
本研究では、「怒り」や「悔しさ」といった自己感情とそれが生じる状況をある程度理解しており、かつ不適切行動の直前に兆候行動(例えば、姿勢が崩れる)が生起する児童1 名と、自己感情の理解が難しく兆候行動がほとんど生起しない児童1名の計2名の自閉スペクトラム症児を対象に、感情の自己コントロールの指導を行った。「対処行動の指導」では、イライラしたり、不安になったりしたときの対処行動(例えば、クールダウンする)を対象児は選択し、ゲーム中・終了後に実行した。続く「対処行動の指導+態度フィードバック」では、「ルールを守る」「応援する」「進んで準備・片付けをする」「我慢する」の4つの行動について、指導者がゲーム終了後、あるいはゲーム中にフィードバックした。指導の結果、自己感情の理解が可能であり、兆候行動が生起する児童では「対処行動の指導」が有効に機能した。また、自己感情の理解が難しく、兆候行動が生起しない児童では「対処行動の指導」に「即時的な態度フィードバック」を組み合わせると適切行動が増加し、不適切行動が減少した。以上を踏まえて、対処行動の指導が有効に機能する条件と態度フィードバックの効果に係る要因が考察された。