自閉症スペクトラム研究
Online ISSN : 2434-477X
Print ISSN : 1347-5932
実践研究
自閉スペクトラム症児の感情の自己コントロール
集団ゲーム場面での対処行動の指導とフィードバックを用いて
倉島 萌朝岡 寛史藤本 夏美菅野 真吾野呂 文行
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2023 年 20 巻 2 号 p. 13-21

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抄録

本研究では、「怒り」や「悔しさ」といった自己感情とそれが生じる状況をある程度理解しており、かつ不適切行動の直前に兆候行動(例えば、姿勢が崩れる)が生起する児童1 名と、自己感情の理解が難しく兆候行動がほとんど生起しない児童1名の計2名の自閉スペクトラム症児を対象に、感情の自己コントロールの指導を行った。「対処行動の指導」では、イライラしたり、不安になったりしたときの対処行動(例えば、クールダウンする)を対象児は選択し、ゲーム中・終了後に実行した。続く「対処行動の指導+態度フィードバック」では、「ルールを守る」「応援する」「進んで準備・片付けをする」「我慢する」の4つの行動について、指導者がゲーム終了後、あるいはゲーム中にフィードバックした。指導の結果、自己感情の理解が可能であり、兆候行動が生起する児童では「対処行動の指導」が有効に機能した。また、自己感情の理解が難しく、兆候行動が生起しない児童では「対処行動の指導」に「即時的な態度フィードバック」を組み合わせると適切行動が増加し、不適切行動が減少した。以上を踏まえて、対処行動の指導が有効に機能する条件と態度フィードバックの効果に係る要因が考察された。

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© 2023 NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
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