2023 年 20 巻 2 号 p. 23-31
本研究では、自立活動の指導目標設定に至る判断の根拠を身に付けさせる研修により、①事例に対する機能的アセスメント、②筆者の提案した8観点を根拠に優先順位の選定が可能かどうか検討することを目的とした。対象は、小・中学校の特別支援学級担任38名であった。研修には、機能的アセスメントに基づく行動問題に対する先行条件及び結果条件による分析と、指導課題を8観点から5段階評価した上での優先順位選定の検討が含まれた。研修効果検討のために、研修前後に演習を実施した。演習の記述内容の分析結果、先行条件及び結果条件の記述は、研修前後でそれぞれ10名から29名、0名から27名に増加した。優先順位に関する記述は研修前後で、8 観点の使用頻度の増加(前後で異なる視点含む)14名、0観点から複数観点使用15名、使用頻度は不変で異なる観点使用3名であった。また、対象者全体の研修前後では特に、改善の緊急性、他者への影響、頻度に変化が見られた。本研究の結果から、先行条件及び結果条件を記述した対象者が研修後に増加した要因として、行動理論に基づく講義・演習の組み合わせが両条件への記述を促すとする先行研究を支持したと考えられる。また、対象者の多くは研修前に用いなかった8観点のいずれかを研修後に使用し指導課題の優先順位を選定したことから、研修効果が認められたと考えられた。今後の課題として、研修受講後の教育現場における実践研究による効果の検討、自立活動に関する正確な知識・技能を身に付ける環境の検討が挙げられた。