抄録
本研究の目的は、統合失調症という病いを抱えて生きてきたひとの人生の語りを通して、病いの意味が創り出されていく過程に存在する構成要素と構造を明らかにすることである。ライフヒストリ一法を用い、2名の男性当事者に非構造式のインタビューを行い、Arthur Kleimanの枠組みから浮かび上がるsufferingを中心に語りを再構成し分析した。結果として「個々にもつ世界観」「生き方の基本スタンス」「社会背景の取り込み方」「病いの受容過程」「ifの物語」の5項目が得られた。まとめると、病いの意味は病いを得る以前の人生から影響を受けており、いわば、人生をはぐくむ核である個々にもつ世界観が重要である。つまり、病いを含めた様々な事柄に直面するたびに自分の世界観と対話し、そこを通して独自の意味を創り出していることが考察された。したがって、看護者は各々の人がもつ世界観に耳を傾け伴走者になることが患者との間に生じる乖離を埋め、患者に添うケアに結びつくということが示唆された。