日本精神保健看護学会誌
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原著
  • 田村 達弥, 明間 正人, 渡邉 照子, 大川 貴子
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 2 号 p. 1-11
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
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    本研究は精神科病棟に勤務する看護師を対象に,リカバリー志向を高めるための研修プログラムを企画し,その効果を明らかにすることを目的とした.

    研修参加者44名を対象として自記式調査を行い,リカバリーに対する知識や態度,ストレングスに焦点を当てた支援の実施度について,研修プログラム前後の変化を量的・質的に分析した.

    その結果,研修プログラムによって,参加者はリカバリーに関する理解が深まり,リカバリーをより志向する方向への変化が認められた.患者のストレングスを知っていくための対話を実践していく中で,リカバリーの概念が知識としてだけではなく実体験を伴う理解に変化し,その人の可能性を信じ,その人の意思を尊重するといった,支援態度の変化が起こったことが示唆された.

    ただし,臨床現場で生じた困難や課題によってはリカバリー志向の停滞が起こる可能性があり,困難や課題をフォローできる体制や機会は継続的に必要であると考える.

  • 加藤 宏公, 柳澤 博紀, 奥村 英雄, 井上 眞人, 三田村 仰
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 2 号 p. 12-22
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
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    目的:精神科デイケア利用者9名に対し,3名ずつの小集団によるアクセプタンス&コミットメント・セラピー(G-ACT)を実施し,パーソナルリカバリーへの効果を検討した.

    方法:G-ACTはプログラム4回とフォローアップ2回で実施し,シングルケースデザインを用いて個別に効果を検討した.効果指標は,価値に基づく行動の生起頻度とパーソナルリカバリーの測定尺度(QPR)を用いた.

    結果:9名中5名に価値に基づく行動の生起頻度に有意な増加が認められた(Tau = 0.44~0.57, p < .05).QPRは9名中6名に有意な上昇が認められた(Tau = 0.55~0.75, p < .05).QPRに有意な上昇のなかった3名は価値に基づく行動にも有意な増加はなく効果量も小さかった(Tau = 0.15~0.17).

    結論:G-ACTにより価値に基づく行動の生起頻度が上昇した5名はQPRも上昇し,パーソナルリカバリーを促進することが示された.今後は,効果量の小さかった対象者の状況要因を分析し,介入方法をさらに検討する必要がある.

  • 西田 祐紀, 片岡 三佳
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 2 号 p. 23-31
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
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    本研究は,精神障害者が安定した地域生活を送るための支援の一つに,Deeganが提言するPersonal Medicineに着目した.地域生活を送る統合失調症をもつ人のPersonal Medicineを明らかにすることを目的に,地域で生活を送る統合失調症をもつ16名を対象に半構造化面接調査を行った.Graneheim, & Lundmanによる内容分析の結果,184コードが抽出され,【自身に合ったライフスタイル】【メディアを通じた活動】【目的をもった外出】【他者やペットを頼る】【精神症状の認識や思考への働きかけ】の5つのカテゴリが明らかになった.

    Personal Medicineの根底には「主体性」のある選択や活用による効果の「実感」があり個人に合ったライフスタイルが構築されていた.統合失調症をもつ人の安定した地域生活に向けてPersonal Medicineに視点をおく重要性が示唆された.

  • 片山 美穂, 相上 律子, 北岡 和代
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 2 号 p. 32-40
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
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    目的:看護実習において学生がストレングスモデルを自身の看護に取り入れるプロセスを明らかにする.

    方法:ストレングスモデルを適用した実習を行った学生16名を対象に半構造化面接を行った.分析はグラウンデット・セオリー法を用いた.

    結果:学生は《ストレングスに着目》していた.そこから様々なプロセスを経て《リスクや問題の解決》あるいは《夢やしたいことに添う》に至っていた.《夢やしたいことに添う》に至るプロセスにおいて【当事者の夢の実現可能性】が中核概念であった.また,学生自身の《ストレングス承認の体験》が【当事者の夢の実現可能性】に向かうプロセスに影響していた.

    考察:ストレングス・マッピングシートの活用と教員によるストレングスモデルを土台とした教育的関わりにより“people come first”の当事者理解とリカバリーを促進する医療者を育成できる可能性が示唆された.

  • 鍋島 まゆみ, 嶋元 和子, 田上 博喜
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 2 号 p. 41-49
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
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    【目的】依存症治療専門病棟を持たない精神科病院の看護師が認識する薬物依存症患者への看護の現状と課題を明らかにする.

    【方法】14名の看護師への半構造化インタビューを基に,認識・体験の再構築による質的記述的研究.

    【結果及び考察】看護師は,薬物依存症患者の複雑な気持ち・個別性を尊重し自律性の回復に向けて,一人の患者「看護の対象者」として認識しているという,薬物依存症患者への向き合い方の本質が明らかになった.また,看護師は断薬による離脱症状や渇望期に襲ってくる症状と相まって,その苦しさや生きづらさを表現できない薬物依存症患者への対応の困難さの特殊性を強く認識していた.さらに,薬物依存症患者の退院後も多職種のネットワークを活用して〈面〉で支える必要性や,回復過程の複雑さに対して気長な教育的配慮を含めた支援の必要性や司法との連携などの課題が見いだされた.

資料
  • 嶌田 盛光
    原稿種別: 資料
    2023 年 32 巻 2 号 p. 50-59
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
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    【目的】本研究は精神科看護師のアサーティブネスと精神科看護ケア技術との関係を明らかにすることを目的とした.

    【方法】Z県精神病院協会会員5施設の精神科看護師500名を対象に基本属性,J-RAS30項目,精神科看護ケア技術37項目の郵送質問紙調査を行った.

    【結果】有効回答数169名(有効回答率75%)を分析対象とした.アサーティブネス平均値±SDは–7.03 ± 21.48でアサーティブネストレーニング目標値範囲内であった.精神科看護技術とアサーティブネスとの関係では独立変数に基本属性,アサーティブネス下位尺度得点,従属変数に精神科看護ケア技術得点とした重回帰分析の結果,精神科看護実習指導年数(β = .59, p < .001),「仕事上の自己主張」(β = .28, p = .05)が正の標準化係数(調整済R2乗=.33)を示した.

    【結論】精神科看護ケア技術を高めるためには「精神科看護実習指導年数」「仕事上の自己主張」の増加が関係することが明らかとなった.

第33回日本精神保健看護学会学術集会
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