1997 年 20 巻 2 号 p. 62-72
地域資源の多くが広域的に利用される交流社会では,来訪者の意向や要求を反映した地域づくりが要請される。現行の制度では来訪者は地域づくりに直接参加することができず,またその責任を負う必要もない。豊かな交流社会を実現するためには,来訪者と彼らを受け入れる地域の住民が地域づくりで協力し,互恵的な関係を形成することが重要である。本稿では機会開発の概念を用いて上記の問題について考察し,生活者の視点から交流社会の地域問題を論じるためのモデルを提案した。そしてその中で以下の諸点を示した。
第一は,交流社会では住民だけの共同性に依拠する従来の地域概念は見直しを迫られること,そして新たに地域を規定する要件となる協働関係には,域外の生活者が形成するアソシエーションの協働関係が含まれることである。第二は,交流が活発になれば地域資源の利用と管理を巡って,生産者と生活者,居住者と利用者,そして利用者と管理者の間に対立が生じやすくなること,しかしその一方で域内外の利用者が生活課題を共有すれば,地域づくりにおいて広域的な協力関係が成立する可能性があることである。第三は,交流型の地域づくりでは上記のアソシエーションの形成を支援すること,地域づくりのプレーヤの交流を促進すること,そしてプロセス重視型の方法論が要請されることである。最後は,交流型の地域づくりを実践するためには,広域的な活動を行う専門家の参加,地域住民組織の改革,社会的コミュニケーションの活性化,そして行政の役割の見直しが求められることである。