応用統計学
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研究論文
競技かるたの決まり字に関する統計的解析
松田 孟留
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2020 年 49 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

競技かるたとは,百人一首の札を取る速さを競うスポーツである.上の句が詠み上げられるのを聞いて対応する下の句の札を取り合うが,どの札が詠まれたか一意に定まる最初の数文字のことを決まり字とよぶ.たとえば,「ち」で始まる札は3枚あり,決まり字はそれぞれ「ちは」「ちぎりき」「ちぎりお」である.しかし,実際には決まり字を聞くよりも早い段階で札が識別できるという選手も多い.そこで本研究では,ベイズモデルを用いた音声解析によって,札による詠み音声の違いがどの時点で生じるかを調べた.選手が詠み音声を聞いて札を識別する過程を逐次ベイズ推定として定式化し,詠み音声の生成過程を隠れマルコフモデルでモデル化した.すなわち,選手は詠み音声を聞きながら札の事後分布を逐次更新し,事後分布が1つの札に集中した時点で札を識別すると仮定し,札の事後分布の更新には隠れマルコフモデルの周辺尤度を用いるとした.このモデルを用いて「おおえ」「おおけ」「おおこ」の3枚の詠み音声データで実験した結果,「おお」の段階でこれらの札を識別できることが確認された.

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© 2020 応用統計学会
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