2025 年 54 巻 2 号 p. 129-144
本研究では,2024年の7つの主要な暗号資産について,1時間足のデータに確率的ボラティリティ(SV)モデルを適用する.モデルには,取引量および収益率とその絶対値に基づく説明変数を組み込み,バーンスタイン多項式により日中および月中の季節性を柔軟に捉える.推定結果から,これらの説明変数に対応する回帰係数はいずれも統計的に有意ではなかった.このことは,伝統的な金融市場でしばしば観察されるボラティリティ・収益率・取引量の関係が,暗号資産市場の1時間足という時間スケールにおいては必ずしも成立しないことを示唆している.また,推定された条件付ボラティリティ(SVモデルによる潜在ボラティリティ)には高い持続性が見られた一方で,伝統的な金融市場でしばしば報告されるような収益率との負の関係(レバレッジ効果)は確認されなかった.季節性成分に顕著なパターンは見られず,ボラティリティ分布にもファットテール性は認められなかった.これらの結果は,暗号資産市場がアルゴリズム取引に強く依存しており,価格変動が伝統的な投資家のリスク回避行動を必ずしも反映しない構造を有していることを示唆している.