応用統計学
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一般線形模型の問題点と擬似尤度の一般化
椿 広計
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1988 年 17 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

Nelder and Wedderburn(1972)による"Generalized Linear Model(一般線形模型)"は,正規線形模型の枠組みを緩和し,より広い「モデルの族」に対して,有効かつ簡便な線形推測を可能にする試みである.Nelderらの方法は,初期の段階では「指数分布族」に従うデータにのみ適用可能な方法と見なされていた.しかし,Wedderburn(1974)の"Quasi-Likelihood(擬似尤度)"の導入以来,観測量yの期待値μと分散の関数関係(分散関数(Variance function))var. y=V(μ)さえ与えれば,一般線形模型の方法は適用可能となった.
しかし,擬似尤度の統計的意味,例えば,擬似尤度が実存する確率分布の尤度関数と一致する場合には,その分布は,「指数分布族」に属し,ある種の制約下における"Minimum Informative Distribution(最小情報量分布)"となることは重要である.実際,擬似尤度関数は真の尤度関数のある意味での「線形最良近似」と見なすことができる.この認識を深めれば,擬似尤度を拡張し一般化することが可能である.これを通じて,従来の一般線形模型では扱えないとされてきた「時系列解析」や「分散成分モデル」等の問題を統一的に扱うこともできる.
本論文では,このような拡張の必要性を議論し,拡張の基本的考え方を示す.

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