応用統計学
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ノンパラメトリック変換の諸型と診断
伊藤 雅憲後藤 昌司
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2004 年 33 巻 1 号 p. 3-26

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抄録

本研究では,理論モデルの適合推測において,両辺ベキ変換方式(Power Transformation Both sides: PTB)の代替としてノンパラメトリック両辺変換接近法(Nonparametric Transformation Both sides: NTB)を導入し,その推定法として,3次スプライン曲線で変換関数を表現する方法を提示した,理論モデルの背後にある(実質科学分野の)現象から観測されたデータが公表され,非線形モデルの推測で諸種の難点が指摘されている2種の文献事例の検討から,対数尺度上でのNTBの適用による平滑化定数ρを動かしたときの残差診断の結果はPTBの妥当性をはかる評価指標となること,またNTBはPTBよりも「外れ値」に対して頑健であることを示唆した.さらに,これらの仮説の検証を目標としてシミュレーションを遂行した.PTBが至適といえるモデルのもとでシミュレーションを行った結果,NTBの平滑化定数の最適値が正の方向に発散し,NTBがPTBの適切性を示唆した,また,真の変換がベキ変換族に含まれない状況でのシミュレーションを行い,小標本でのNTBの有用性を示唆した.さらに,NTBのパラメータの推定値の安定性の評価を意図したシミュレーションでは,PTBと比較してNTBがモデル・パラメータの安定した推定値を与えた.経験モデルの適合推測,応答と説明関数の最適性に注目した2種のノンパラメトリック変換接近法として交替条件つき期待値法ACEと加法型分散均一化変換AVASを導入した.理論モデルを文献事例のデータに即してACEとAVASによる経験モデルの適合結果で吟味し,新たな知見を加えた.

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