標本調査では,調査区全体からデータがとられ全体の母集団特性が調べられる.同じデータを用いて市町村レベルの母集団特性を求めようとすると,市町村によっては取られたデータが少ないため標本平均などの推定値は推定誤差が大きくなってしまうという問題が生ずる.これを小地域問題といい,注目している地域(市町村)の周辺地域からデータを上手に取り込むことによって推定精度を高めることができる.そのための代表的なモデルが線形混合モデルであり,そこから導かれる経験最良線形予測量が小地域問題を解決する手法になっている.本稿では,線形混合モデルを利用した小地域推定について解説する.特に,線形混合モデルのもつ(共通母数)+(変量効果)という構造が推定精度を高めるためにどのように働くのかについて説明し,実際どの程度誤差が抑えられているのかに関して平均2乗誤差の推定と信頼区間の構成についてまとめる.最後に,空間データ等を分析するための様々なモデリングの方法を紹介し,一般化線形混合モデルと死亡率推定への応用についても説明する.