石油技術協会誌
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ランドン基盤岩油田油層管理におけるトレーサー圧入・監視情報とさまざまな観測情報を利用した統合アプローチ
ウーイ キアム チャイ畠山 厚志グエン チュ チュエン
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2010 年 75 巻 6 号 p. 452-461

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抄録

ランドン基盤岩油層は花崗岩質のフラクチャー型油層である。炭酸塩岩のフラクチャーシステムと異なり, 基盤岩の岩体の孔隙は無視でき, 貯油と生産はフラクチャーシステムに依存する。1次回収後, 原油の追加回収のため水圧入を開始した。
フラクチャーシステムでの水圧入は, フラクチャーの連続性, 形状, 向きにより効果が異なるため, 非常に予測が困難である。基盤岩油層の水圧入計画を管理するため, 流れの方向を注意深く理解することが重要である。そこで, 放射性のトレーサーの圧入・監視により流体経路に関する情報を取得することとした。
トレーサーの圧入・監視技術が確立されたことにより, 坑井間の導通, 不均質性, 流体力学に関するデータが得られることが確認されが, データの解釈は単純ではない。このため, 精確で矛盾のない解釈を行うためには, 生産データなどを含む周辺情報を統合して評価することが重要である。
本論文では, 掘削計画・油層管理を目的として, トレーサー圧入・監視と, 他の観測データの適用を統合的アプローチの一例として紹介する。観測データの例として, 定期的にサンプリングしている生産水の化学組成がある。この方法により, 圧入水・地層水・帯水層水の移動, 確認が可能である。
原油のフィンガープリントもまた, 解釈に供するデータの一部として活用され, 油層の区画化・延長, 連続性などの評価が可能である。他に坑井の生産履歴, 坑井圧力解析結果, 物質収支法などのデータも利用された。本論文では, 実際にフィールドで掘削計画・油層管理計画に用いられた, トレーサー圧入・監視データの解析と他の周辺データの統合的活用について実例を示す。

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© 2010 石油技術協会
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