2013 年 52 巻 6 号 p. 241-254
苗場山山頂の湿原堆積物に挟在するテフラ層の層相,鉱物組成,火山ガラスの形状・屈折率・化学組成を検討した.また泥炭質な湿原堆積物から14C年代値を得た.その結果,湿原堆積物は完新世に堆積した肉眼で確認できるテフラ層12層(NB1〜12)を記録しており,下位から,NB3は鬼界アカホヤテフラ(K-Ah)と妙高赤倉テフラ(My-A)との混在層,NB8は草津白根熊倉軽石層(KS-Ku),NB10は草津sp1-3テフラ層,NB11は妙高大田切川テフラ層(My-Ot),NB12は高谷池火山灰層グループc(KGc)にそれぞれ同定・対比した.それらテフラ層の間に浅間・草津白根・妙高・新潟焼山火山起源の可能性があるテフラ層が挟在する.苗場山はこれらテフラの供給源となる北関東・信越と日本海側の沖積平野との中間地点に位置するため,本研究による結果は,地域的ではあるが,周辺地域の層序や編年に参考となるテフラ層序を提供する.また,山頂での湿原環境下では,肉眼で観察できるテフラ層でも,その構成物が複数起源に由来するテフラの混在や再堆積によるものが含まれることが明らかとなった.