第四紀研究
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オホーツク海完新世堆積物の岩石磁気学的研究
北海道網走沖北見大和堆周辺で採取された2本のコア試料
川村 紀子池原 研小田 啓邦鳥居 雅之
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2003 年 42 巻 2 号 p. 83-97

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抄録

北海道網走沖のオホーツク海海底には,堆積速度の速い堆積物が分布している.この海域の堆積環境の変動を復元するため,過去2,700年の堆積物で堆積速度150cm/kyと考えられる北見大和堆の北および東側の海底で採取したグラビティ・コアGH00-1001(水深461m)とGH00-1006(水深1,348m)に,岩石磁気学的分析法を適用した.
その結果,各コアに含まれるおもな強磁性鉱物はマグネタイトと推定できた.各種の岩石磁気学的パラメータは,火山灰と礫の存在を示唆するスパイク状の異常値,堆積場の化学的環境変化を示すステップ状の変化,砕屑性粒子の給源の変化を反映する幅広いピークの3種類の変動を示した.GH00-1001の300cm以深とGH00-1006の150cm以深では,細粒なマグネタイト粒子が選択的に溶脱されて,平均粒径が大きくなった可能性があり,還元的環境であったと推定できる.また,GH00-1001の粒径や組成の異なる強磁性粒子のエピソディックな供給を示唆する深度275cmと420cm付近の層準も,磁気的パラメータの変化としてとらえることができた.粒径や組成の変化は,古墳寒冷期に対応した供源の変化を示す可能性がある.

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