日本再生歯科医学会誌
Online ISSN : 1880-0815
Print ISSN : 1348-9615
ISSN-L : 1348-9615
原著論文
MTA直接覆髄によるヒト歯髄の神経再生の組織学的検討
大久保 厚司井上 正朗松永 常典辻本 真規
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 7 巻 1 号 p. 25-33

詳細
抄録
目的 :日本では白色のMTA / ProROOT MTA®が販売されている.ProROOT MTA®に超微量に含有されている石灰化を阻害する可能性のある超微量元素や亜砒酸ならびにpHの問題が関与する歯髄組織の炎症反応に対して評価する必要性がある.
材料および方法 : 患者の同意を得て,歯列矯正と半埋伏歯智歯の要抜歯に無菌的な機械的露髄をおこなった後,2%NaClOで止血した後,無菌綿球で乾燥し,ProROOT MTA®で覆髄をおこない,2週と4週の組織学的再生にH-E染色ならびに歯髄神経再生にS-100免疫陽性反応によりヒト歯髄組織再生を検討した.
結果および考察 : ヒトでは条件が異なるため組織学的な経時比較はできないが,結果は2週検体では覆髄したProROOT MTA®直下の歯髄組織にデンティンブリッジ形成や歯髄神経の再生はほとんど見られず,MTA粒子の周囲には充血は認められなかった.4週検体では約200µm幅の形成された骨様もしくはセメント質様のデンティンブリッジ層を認め,石灰化層直下の界面は正常な歯髄組織と象牙芽細胞が回復しつつある.2週像では全く認められなかったシュワン細胞は4週では石灰化層直下から再生しているような像が数多くみられた.本検体の2週像と4週像でもヒト歯髄組織に溢出したMTA粒子周辺に充血や組織変性が認められなかったことより,超微量の亜砒酸やアルカリpHはヒト歯髄組織の影響を及ぼさない程度で生体調節されていくと考える.また,これらの検体から歯髄神経再生と象牙芽細胞に関連性があるように思えた.
著者関連情報
© 2009 日本再生歯科医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top