JARI Research Journal
Online ISSN : 2759-4602
巻頭言
特集 「自動運転 ~システムの安全性・受容性の評価~」 にあたって
高橋 理和
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2024 年 2024 巻 2 号 論文ID: JRJ20240201

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特集 「自動運転 ~システムの安全性・受容性の評価~」

にあたって

業務執行理事  高橋 理和

自動車産業は今,『100年に1度の変革期』にあると言われる中,CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)やカーボンニュートラルへの対応をめぐり競争が繰り広げられています.中でも,自動運転については,交通事故削減/渋滞の緩和/運転手不足への対応/運転からの解放などの効果が期待されており,EVとの親和性も高いことから次世代モビリティでの実現を目指し,世界中で自動運転への取り組みが加速しています.

自動運転技術の実現のためには,さまざまな技術的,法的,倫理的,および社会的課題が存在します.

日本国内における自動運転技術の推進と普及に向けては,経済産業省と国土交通省が連携するなど,政府,自動車メーカー,テクノロジー企業,研究機関などが参画して自動運転技術の研究,開発,実用化に向けた積極的な取り組みが行われており,早期実現に向けて限られたリソースの中で,より効率よく研究開発を推進することが求められることから,更なる協調領域の拡大や産官学の連携がますます重要となってくると思われます.

一方,日本国内の法規制の面においても,2020年4月の自動運転レベル3解禁に続き,2023年4月に施行された道路交通法における特定自動運行に係る許可制度により,車内および遠隔地に運転者がいない状態において自動運行装置を備えた自動運転車両が公道を自動走行することが可能になるなど,自動運転の実現に向けた法整備が推進されています.

自動運転技術の発展に向けた国際協力においても,日本は他国との連携を通じて,技術の標準化や共通規格の整備に貢献するなど積極的に取り組んでいます.自動運転による安全で自由なモビリティ社会を効率的に実現するためには,自動運転システムの安全性能に対する評価を,国際的に統一された指標で実施することが重要となります.例えば,自動運転システムの安全性リスクを最小化するための枠組みとなるISO 21448(SOTIF:Safety of the Intended Functionality)の安全性評価手法の一つとして,経済産業省が実施しているSAKURA(Safety Assurance KU-dos for Reliable Autonomous Vehicles)プロジェクトの活動成果が活用された「シナリオに基づく安全性評価フレームワーク(ISO 34502)」が2022年11月に発行されたことは,その活動成果の一つです.ただし現状のISO34502は,自動車専用道のみが対象となっており,一般道まで評価の対象を拡大するためには,更なる研究が必要です.

自動運転システム開発プロセスの企画・設計・評価の各フェーズで,安全性の評価及び検証する際の共通基盤としてISO 34502を活用することにより,安全性および開発効率の向上が図れると共に,自動運転システムが満たすべき安全性の要件を明確化することで,社会受容性の向上も期待できます.

一般財団法人日本自動車研究所(JARI)は,研究事業戦略での目指す姿として『2050年カーボンニュートラル/ 事故死者ゼロ/ 自由で便利な移動と物流』を掲げて研究・試験に取り組んでおり,この3項目すべてに関連する自動運転に関しては,システムの安全性評価に重点を置き,SAKURAプロジェクトやRoAD to the L4など様々なプロジェクトに参画しています.今回の特集号では,自動運転に関連する内容をまとめています.SAKURAプロジェクト含め,JARIが参画している自動運転システムの安全性・受容性評価に関する研究速報 /研究活動紹介/ 解説などを掲載しております. 皆様のお役に立てれば幸いです.

 
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