2015 年 11 巻 1 号 p. 1-20
本研究の目的は,多枝選択式の英語文章読解テストにおける錯乱枝の選択率が能力別にみてどのように異なるか検討することであった.研究1 では,英語文章読解テストにおいてどのようなものが錯乱枝になりうるか質的に検討するため,調査協力者16 名に対し,私立大学入学試験問題の多枝選択式・英語文章読解テストで出題された問題を用いて,誤答選択枝のそれぞれについてコメントを収集し,コメントの結果をもとに錯乱枝の要因・水準を作成した.研究2 では,大学生の受検者366 名に英語文章読解テストを実施し,能力別にみた錯乱枝の効果を検討した.多項ロジスティック回帰分析および残差分析の結果,能力低群では文章中に記述がなく否定語や因果関係を用いた錯乱枝を選ぶ者が多かった一方,能力中群では文章中に記述があり否定語や因果関係を用いた錯乱枝を選ぶ者が多かった.また,能力高群では文章中に記述があり対義語を用いた錯乱枝を選ぶ者が多かった.本研究の知見から,実際の英語文章読解テストにおける誤答選択枝のもっともらしさが能力別に異なる可能性と,多枝選択式の項目作成にかかる労力を軽減できる可能性が示唆された.