2020 年 16 巻 1 号 p. 31-44
認知診断モデルは, テスト回答者の認知的特性であるアトリビュートの修得について診断する統計モデルである. 従来型の認知診断モデルではこの特性値に二値離散変数を仮定するが, アトリビュートの修得状況は修得したか否かという二値よりも,修得の程度に対応する連続的なパラメタとして,よりよく表現でき,理解できる可能性がある. こうした考えに基づき,離散特性値の仮定を緩和して連続型の特性値を考える非補償モデルとして, アトリビュート間が独立であるPINC モデルとアトリビュート間に関連をゆるすHO-PINC モデルが開発されている. 本研究では, この連続変数への緩和のアイディアを補償モデルに適用した,PIND モデルとHO-PIND モデルを提案する. 複数の条件におけるシミュレーションによるパラメタリカバリ性能を示した後, 実データを用いたモデルの推定結果を報告し, 提案モデルの応用可能性について議論する.