2021 年 17 巻 1 号 p. 9-23
本研究ではCEFR を日本語教育に適用する可能性について,尺度構成理論面から検討した。具体的には,ⅰ) CEFRが設定する「聞く」,「読む」,「話す」,「書く」,「やりとり」の各言語活動の例示的言語能力記述文を基本に,学習者が具体的な言語活動を日本語で「できる」程度を自己評価して4段階評定尺度に回答する形式の調査票を開発し,ⅱ)海外および国内で日本語学習者調査を実施した。ⅲ)この調査データを基に言語能力記述文を段階応答モデルによりIRT 尺度化した上で,言語活動毎に言語能力記述文の困難度順を元のCEFR と比較した。その結果,CEFR を日本語教育の場で活用するには,「やりとり」を中心に言語能力記述文に関してレベルを変更する,日本語の独自性を反映するものを加える,欧州と日本の社会文化的な違いに配慮する,という調整や補足が必要であることが明らかになった。