2010 年 6 巻 1 号 p. 103-111
本研究では,新しく大学入試センター試験に導入された英語のリスニングテストの独自性や妥当性,社会的な波及効果を検討した。まず,センター試験の他の教科とリスニングの関係を調べた。各教科を総合的な受験学力に相当する軸と,文・理系の性質を示す軸からなる平面上に射影した。リスニングは,英語筆記試験とは布置が異なり,より文系的で国語の位置に近いことが見出された。また,妥当性の検討も紹介された。筆記試験とリスニングの相互相関は高いが,主観評価に基づく聴解行動の熟達度に対しては相関に差が見られた。リスニングは聴解行動との間に高い相関があり,構成概念としての妥当性が評価された。リスニングテストの導入は,中学・高校の英語の聞き取りへの積極的な取り組みを喚起し,文法,語彙,論理の必要性の認識を促すなど,正の波及効果が指摘された。