入試得点と入学後の成績との間で相関を計算すると,予想したよりも小さい値が算出されることが多い.これは入学しなかった標本において後者が欠測となるために生じる現象であり,選抜効果と呼ばれる.選抜効果の影響を除いて真の相関係数を推定する方法には最尤推定法とベイズ推定法が提案されているが,その小標本における挙動はこれまで十分検討されていない.そこで本研究では,小標本下において真の標本数・真の相関係数・欠測標本の割合を操作し,両手法を比較する数値実験を行った.結果の概要は以下の3点である. (1) 標本数が十分大きければ,どちらの手法を用いても適切な推定ができた (2) 推定値の期待値が真値に近いかどうかという観点からは,ベイズ推定がより推奨される傾向にあった (3) 推定値と真値の二乗誤差の観点からは,最尤推定がより推奨される傾向にあった.本研究で用いた推定のためのRコードはAppendix に掲載されている.