2013 年 9 巻 1 号 p. 129-144
わが国の大学入試におけるセンター試験の存在価値は言をまたない。しかし,その利用実態には問題がある。ア・ラ・カルト方式の下で技術的には保証されていない素点が利用されているからである。共通第1次学力試験が大学入試センター試験へと移行した時点で,試験の制度設計に根本的な転換があったと考えるべきであった。それにもかかわらず,その事実が見過ごされたために現在の問題状況が招来されたと考えられる。さらに事態は年々深刻化しているように見える。本研究ではパーセンタイル順位を用いて科目別得点分布の年度間のゆらぎを検証し,素点の持つ意味の曖昧さを示した。また, 満点を取る受験者数から,科目別テストとしての性能の限界を示した。センター試験を用いて公平な入試を実現するには,大学入試センターと個別大学が協力し,科目別得点の共通尺度化を行う必要があるのではないだろうか。