視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第20回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 in 九州
セッションID: 9
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口頭発表
日盲委を動かした東日本大震災の視覚障害者支援の取り組み
中途視覚障害者をどのように把握し支援するか
*加藤 俊和
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抄録

 東日本大震災では、視覚障害者がより過酷な状態に置かれていたことは言うまでもない。特に津波は、単独では避難できない視覚障害者にとってはすなわち死を意味する。また、避難ができたとしても、避難先で視覚障害者がたちどころに困るのはトイレで、周囲の人に手引きをお願いすることはもとより、トイレの形から紙の処理方法までいちいち聞かなければならない。このように避難所では過酷な状態となることが多く、阪神淡路大震災では半壊した自宅でも戻る人が相次いだが、大津波の被災では自宅に戻ることもできない。
 今回の大きな問題は、被災後数ヶ月が経っても、未だに多くの視覚障害者を私たちが把握できず支援もできていないことである。阪神淡路大震災においては、被害が比較的狭い場所に集中し、避難所も限られた範囲にあったので、比較的把握がしやすく支援もかなりできた。しかし今回は、被害の大きい3県の中央部にある点字図書館や盲学校と大部分の被災地とは100km以上も離れており、避難所も非常に広い範囲に点在している。
 しかし、個人情報の扱いの厳しさは16年前とは比較にならないため、任意団体では関係団体の名簿すら把握することが困難なことが予想された。そこで、日本盲人福祉委員会(日盲委)の下に対策本部を置く取り組みを行い、対策本部を設置することができたことによって、点字図書館の利用者リスト、視覚障害者団体名簿、盲学校同窓会名簿の入手がかなりスムーズにできた。そして厚生労働省や各県、市町村などの協力を得るのにも大きい力を発揮した。日盲委とは、当事者・施設・教育界が総力をあげるために1956(昭和31)年に結成され、障害者福祉の基礎となる数多くの成果をあげた組織である。今回の大震災の勃発とともに取り組んだ組織的な動きを検証する。

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© 2011 視覚障害リハビリテーション協会
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