視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第20回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 in 九州
選択された号の論文の43件中1~43を表示しています
教育講演
  • -障害者施策の方向性と視覚障害者リハビリテーション専門家の役割-
    竹下 義樹
    セッションID: E
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    1 障害のある人の権利条約(以下、単に「権利条約」という)
    (1)権利条約の内容と目標
     社会モデルを柱とする障害ないし障害のある人のとらえ方、合理的配慮を中心とする差別の排除、地域生活等における自己決定権、インクルーシブ社会の実現とインクルーシブ教育の原則、徹底した当事者によるモニタリングなど。
    (2)権利条約が各国に求めているもの
     障害のある人の自主性ないし主体性の確保、平等社会を作り出すプロセスの重要性、社会の意識変革を作り出すための誘導的原理、他の人権条約との一体性など。

    2 視覚障害教育及びリハビリテーション
    (1)視覚障害のとらえ方
     情報障害としての視覚障害、移動障害としての視覚障害、視覚障害による発達の阻害、視覚障害と想像性の関係、認知力ないし意識と視覚障害、本質としてのコミュニケーション障害。
    (2)視覚障害と教育論
     統合教育ないしインクルーシブ教育の重要性、専門教育としての特別支援教育の役割ないし位置づけ、日本における伝統と今後の発展方向。
    (3)視覚障害リハビリテーションの専門性と役割
     視覚障害の特性とリハビリテーション、発達保障及び社会参加の保障としての視覚障害リハビリテーションの役割、視覚障害リハビリテーションの専門性維持の重要性
    (4)当事者団体と視覚障害リハビリテーション専門家集団
     当事者団体とりわけ日盲連の役割、当事者団体と視覚障害リハ専門集団の連携・役割分担、これから問われる医療機関・教育関係者・リハ専門家集団・福祉関係者そして当事者団体の関係性。

    3 重度視覚障害者同行援護事業
    (1)これまでの移動支援事業との相違点
    (2)同行援護事業の特徴と課題
    (3)視覚障害リハビリテーションと同行援護の関係
     歩行訓練との関係、ロービジョンへの支援と同行援護、視覚障害者のリハビリテーションと同行援護、ガイドヘルパーに求められる資質との関係

    4 私の障害者運動と夢
    (1)中途視覚障害と私の人生・世界観
    (2)弁護士としての私
    (3)障害者運動における私の役割
    (4)60歳を迎えた私の夢
特別講演1
  • -平和は長崎から-
    矢嶋 良一
    セッションID: SP1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    1 無謀な戦争の帰結は原爆投下
    (1) 米軍の原爆投下で廃墟と化した長崎(1945年8月9日)
    (2) 生き残った人々も原爆後障害によって肉体的、精神的、社会的にも筆舌に尽くしがたい苦しみを味わう
    2 核大国の米ソ(ロシア)へ「長崎の鐘」を贈ろう
    (1) 米ソの核軍拡競争に警鐘を乱打、核戦争阻止
    (2)「平和の鐘」は日本、米国、ロシア、中国で、今も鳴り響く
    3 非暴力による「反核9の日座り込み行動」
    (1) 欠陥原子力船「むつ」廃船、核兵器をなくすまで「座り込み行動」を展開(強い意思)
    (2) 32年間継続、市民の広場(被爆者、被爆体験者、勤労者、市民、高校生)実現
    4 「核のない世界」をめざして
    (1) 核軍拡競争から核軍縮、核のない世界へ
    (2) 2010年5月、核拡散防止条約(NPT)再検討会議で一歩前進
    5 核と人類は共存できない
    (1) 地震王国日本、原子力発電所54基、活断層の上に原子力発電所
    (2) 地震や津波は天災だが、東京電力福島第一発電所の重大事故は人災(安全神話の完全な崩壊)
    6 平和な社会とは(戦争がないと言うだけでは不充分)
    (1) 暴力、差別、貧困などがなく、命を大切にする社会
    (2) 相手のことも考え、共に生き共に助け合う社会
    7 終わりに
     かつて私は、坂田少年と出会って心を打たれ、高校球児の選手宣誓に感動した。未曾有の巨大地震と原発震災で被災された人々の姿を、新聞、テレビで見る時、自分に何ができるのかと問う。自然にあの詩が浮かんでくる。
特別講演2
  • -雲仙普賢岳噴火災害に学ぶ-
    本田 利峰
    セッションID: SP2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     普賢学園は雲仙普賢岳のふもとに位置し、海あり山あり風光明媚なところである。
     終戦後地域の方の協力で農業を営んでいた両親が、地域にご恩返しをしたいとの思いで、「お陰様の道 地域共生」の理念のもと、1965年保育園からスタートした社会福祉法人であり、地域の皆様と共に歩んでいる。
     私は工学部に進んだが、両親の福祉の理念を工学的思考により具体化しようと1978年知的障害者入所更生施設普賢学園に就職した。
     1991年6月3日運命の大火砕流発生。かねての避難計画通り利用者全員無事避難し、その日より警戒区域に設定され2年8ヶ月に及ぶ長い避難生活を送った。その間精神的ストレス、パニック、拒食症、不眠、情緒不安定による長期入院者も出てきた。災害救助法の21分野90項目の中には障害者の為の仮設住宅という条文はどこにもなく、1971年国際障害者年のテーマである「完全平和と平等」が現実にはほど遠く、障害者の権利が保障されていないことを知り、この差別をなくす為にも避難するだけでなく、障害者の本当の意味での権利の擁護を前面に打ち出し、広く関係機関に運動して仮設園舎ができる状況になった。又、行政より施設の移転を勧められたが、このような時だからこそ地域と苦しみを共にすると貫いた。地域の皆様も施設が移転しないよう強く働きかけていただき、1994年無事本園復帰を果たすことができた。その後も共に地域の復興に努力し、現在も地域の活性化に積極的に取組んでいる。
     今後も常に支えて頂いた皆様の善意に報いる為にも、地域へ還元できる福祉サービスを模索、実践し、利用者の皆さんが地域の人々と共に、ささやかな誇りをもち、お互いに適度に助け合い、寄り合って「生きていて良かった」と思えるような環境づくりに尚一層努力していきたい。
大会長講演
  • 高橋 広
    セッションID: T
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     1994年、ある一人の患者さんとの出会いからロービジョンケアを知り、学んできました。 この中で、医療関係は無論のこと、 教育や福祉関係など多くの方々とのすばらしい出会いがありました。特に、視覚障害児・者や家族の皆さんが私の先生だと感じています。
    ロービジョンケアを私は、視覚障害者が保有能力(視覚)を最大限に活用してQOLの向上を目指すケアと定義しています。
    眼科を訪れる人は何らかの視覚的問題をもち、これらを解決するのが眼科医療の使命で、近年の眼科治療、とくに手術療法の発達は目覚ましく、失明する患者は減少しています。 しかし、今なお視機能が回復できない患者さんが多いのも事実です。このため患者である視覚障害児・者に対し支援が必要であることは医療者なら誰でも認めていますが、ロービジョンケアを行う眼科医療機関はまだ少ないのが現実です。また、ロービジョンケアは眼科医療だけでは完結できず、教育や福祉関係など多くの皆さんとの連携が欠かせないことは今更言及するまでもありません。
    本講演では私が経験してきた眼科医療での実践をお話したいと思います。
シンポジウム
  • 東日本大震災の中での視覚リハ関係者の活動から学ぶこと
    吉野 由美子, 加藤 俊和, 原田 敦史
    セッションID: S
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     東日本大震災が起こり、その規模の大きさに呆然としていた時に、ある会員の方から「協会としても何か支援活動をしないのですか」「何か役に立てませんか」と言う問い合わせをいただいたが、会員400人の協会で、財政的にも行き詰まり状態である中「何ができるのか」と考えあぐねていた時に、日盲委を中心として「対策本部」を作るので視覚リハ協会も視覚障害の専門家集団として協力して欲しいと言う申し出を受けた。
     この動きの中心となった加藤さんは、阪神淡路大震災の時に、被災した視覚障害者の支援にあたった経験があり、その経験から、「連携の大切さ」と「初期戦略として何をなすべきか」の見極めができているのだと言うことを知った。また、阪神淡路大震災の体験などの重要な先人の知恵が、私たち専門家に共有の財産となっていないことも分かってきた。
     本シンポジュームでは、東日本大震災で被災した視覚障害者に対する支援の初期戦略と今後の見通しについてを対策本部の指揮を取っている加藤さんから伺い、また現地で実際に被災した視覚障害当事者の方に会って、その現状をつぶさに見ている原田さんからその状況を伺い、視覚障害リハビリテーションの専門家として、次にこのような災害が起こったとき「何をなすべきか」「どのような備えをしておくべきか」の知識を共有する事を第一の目的としている。
     また、大震災からの復興過程の中で必要とされる長期的な支援についても問題を提起することができればと考えている。  
口頭発表
  • 伊東 良輔, 武田 貴子, 中村 龍次
    セッションID: 1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     福岡県北九州市では、平成10年度より市内在住の身体障害手帳を取得している視覚障害者を対象に「中途視覚障害者緊急生活訓練事業(以下、訓練事業)」を実施している。視覚障害リハビリテーションの社会参加訓練の一環として実施している「訓練受講者のつどい(以下、つどい)」と、つどいから誕生した自助グループ「あいフレンズ北九州」について、13年間の活動を振り返り、自助グループ立ち上げまでの変遷と今後の展望について考察する。

    【自助グループ立ち上げまでの経緯・方法】
     北九州市では、3名の視覚障害生活訓練等指導者(以下、歩行訓練士)が訓練事業に従事している。個別で行う訓練と集団の中で行う訓練に分けられる。 個別訓練で獲得した技術を応用し、会場までの移動や点字やパソコンを利用して記録をとる等、実践的な訓練を行う場として、平成12年度より、つどいを開催している。個別訓練を受講した当事者の仲間作りの場としても活用しており、自助グループ設立のきっかけとなった。 平成20年度に、当事者から「自助グループをつくりたい」という声があったことを受けて、訓練士が運営委員会を発足させた。

    【結果】
     2ヶ月に一度の話し合いに、訓練士が1年間オブザーバーとして参加したが、その後毎月の開催となり、自助グループ「あいフレンズ北九州」として当事者主体で活動するに至った。

    【考察】
     中途視覚障害者は、移動手段の獲得や外部からの情報を入手することが困難なため、当事者のみでの活動まで至りづらいのが現状である。当事者主体で自助グループ立ち上げに至った要因として、移動手段の獲得、情報を入手する技術がある、障害受容が進んでいる方を中心に運営委員会を発足させたことだと考える。

    【今後の展望】
     自助グループの運営委員が各地域の相談役となり、より身近な地域で中途視覚障害者のサポートに当たれるように体制を整備していきたい。
  • -WBUなどの当事者団体による取り組みを中心として-
    指田 忠司
    セッションID: 2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     視覚障害者の雇用・就業問題は、わが国のみならず、各国に共通の課題である。しかし、各国の取り組みの方向性は、その歴史的背景などの違いからさまざまである。
     本研究では、世界最大の視覚障害当事者団体であるWBU(世界盲人連合)のネットワークを通じて収集した情報をもとに、欧米先進国と、アジア太平洋諸国の取り組みを概観しながら、その特徴を明らかにするとともに、国際比較の視点からわが国における今後の取り組みの方向性について課題を提示する。
  • -アッシャー症候群(Usher Syndrome)の盲ろう者の事例を通して-
    松谷 直美
    セッションID: 3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     アッシャー症候群の盲ろう者は、聴覚障害児として生まれ、青年期等に網膜色素変性症で視力低下や視野狭窄等の視覚障害が進行する。聴覚障害者として就労後、視覚障害が進行し、配置転換等を経て一定期間就労を継続している。しかし、最終的には、業務遂行が困難となり、やむを得ず離職に至る。離職することにより社会とのつながりをたたれ、孤立し、将来に悲観する人も多い。しかし、多くの盲ろう者は、職業に就くこと、仕事を継続することを強く望んでいる。
     アッシャー症候群の盲ろう者の就労継続に向けた要因及び阻害要因を明らかにし、就労継続の可能性について研究をすることを目的とする。

    【対象】
     平成18年厚生労働省の「身体障害者実態調査」による全国の盲ろう者は22,000人であり、その盲ろう者のうちアッシャー症候群の盲ろう者の数や実態は把握されていない。アッシャー症候群の盲ろう者は、ある程度限定されているので、盲ろう者関係団体の活動に参加するアッシャー症候群の盲ろう者を選出する。就労継続中の者3名、離職後10年程度の者3名、計6名を対象とする。

    【調査方法】
    ・半構造化面接を実施する。
    ・対象者は、アッシャー症候群の盲ろう者であるため、インタビューは盲ろう者の障害特性を考慮し、調査員自身の手話を用いて実施する。及び調査対象者の手話表現は、同席を依頼した手話通訳士と共同して手話を読み取り音声として録音する。調査研究は本大学の研究倫理審査を経ている。

    【結果】
     平成23年5月現時点では、対象者、就労継続中(3名)、離職者(3名)のインタビュー調査は終了し、現在、分析を実施しているところである。 就労継続理由として見えてきたことは、歩行訓練、事業所内の環境整備、配置転換等であり、離職理由としては、移動困難・作業遂行困難・コミュニケーション困難等がある。
  • -視覚障害学生に対する支援の必要性と方法-
    長岡 英司, 宮城 愛美, 小野瀬 正美, 飯塚 潤一
    セッションID: 4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】
    視覚障害者の大学進学は、もはや社会的に特別視される事象ではなくなった。一方で、大学関係者の間では、視覚障害学生に対する学習支援の必要性への理解が進み始めている。だが、実際の学習場面では種々の問題に直面しており、とりわけ学習資料の利用では困難が多い。

    【目的】
    学習資料の保障に関する視覚障害学生のニーズは多様化している。そうしたニーズに大学の教職員等が対応するには、基盤となる知識が必要であるが、それを簡便に得る方法がない。今回のビデオ『視覚障害学生の入学が決まったら』は、そのような状況の改善を図る一助となるよう制作された。

    【方法】
    本ビデオの制作は、文部科学省の特別教育研究経費による学習資料整備プロジェクトの一事業として行われた。2009年秋に準備に着手し、出演者の選定等を含む企画は学内の制作WGが行い、シナリオの作成や撮影・編集等の実務は学外の専門家に委託して、2011年3月に完成した。

    【コンテンツ】
    全体で約60分の本ビデオは七つのパートからなり、すべてを一連に再生できるほか、メニューを介してパートごとにランダムに視聴することも可能である。前半の三つのパートは学習資料の保障に関する基本的な考え方、後半の四つのパートはメディア変換の実際を、視覚障害当事者や支援者が出演する映像で解説している。

    【評価】
    本ビデオは、学習資料の保障の推進や情報アクセスに関する理解の増進に資することを目的に、教育・福祉関係者等にDVD版で無償提供されている。この分野ではこうした映像資料がなかったこともあって、視聴者からは「具体的でわかりやすい」、「学習資料の保障を総合的に理解できる」等の一定の評価を得ている。
  • 高梨 美奈, 小林 幸一郎, 小田 浩一, 香田 泰子, 天野 和彦
    セッションID: 5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     フリークライミングは視覚障害者にも適したスポーツであり,教育的利用価値があるスポーツと言える。著者らは2008年より筑波技術大学の視覚障害学生を対象とした体育集中授業として導入された「フリークライミング」の授業指導を行ってきた。ここでは視覚障害に配慮した上で,登るという身体的な技術指導のみならずパートナーシップや自己責任などに着目した心理的効果を引き出す独自のプログラムを実施した。 本研究の目的はこのプログラムの有用性を検証することである。2010年度の受講生9名(男性5名,女性4名,弱視9名)を対象に,フリークライミング(以下,クライミングと略す)の体験過程と前後での変化を調べるため自己効力感尺度,自由記述式質問紙,インタビュー,ビデオ分析を行い,総合的に考察を試みた。その結果,クライミングを活用した体育カリキュラムの有用性が示された。
  • 大倉 元宏, 中川 幸士
    セッションID: 6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     本研究の目的は、二次課題法により、簡便に単独歩行中の余裕能力を測定できる方法を開発し、もって、歩行訓練の段階における心理的ストレスの評価に応用することにある。

    【方法】
     実験参加者は施設に入所して半年間のリハ訓練を受ける視覚障害者3名(男2、女1;35~62歳)と修了生1名(男、40歳)であった。修了生は対照として参加してもらった。訓練生のうち1名の程度等級は4級、他は1級であった。訓練を開始して3、5および6か月後の3回にわたって、二次課題法により、単独歩行中の余裕能力の測定を行った。二次課題は白杖と反対側の手に持った押しボタンスイッチを1秒に1回タッピングすることであった。歩行ルートは全長140m、大部分が歩道で、1か所幅員5mの道路が直角に交差しているところがあった。歩道部には点字ブロックが整備され、3つの曲がり角が含まれていた。実験参加者には、各測定日において、二次課題を行いながら、1往復することを求め、往路および復路の終点で、歩行中の不安感を10段階(10:非常に不安であった、1:まったく不安はなかった、5:その中間)で答えてもらった。また、往路出発前に電子メトロノームで1秒間隔のタイミングを知らせ、その後、二次課題のみを約1分間行わせた。

    【結果と考察】
     歩行訓練の現場での応用のためには評価指標は簡便である必要がある。二次課題の評価に「最大変動量」(隣り合うタッピング間隔の差分(絶対値)の最大値)、「平均変動量」(隣り合うタッピング間隔の差分(絶対値)の平均値)、「変動倍率」(平均変動量から二次課題のみにおける平均変動量を減じたものを二次課題のみにおける平均変動量で除した値)を取り上げた。歩行訓練の進行に伴う各評価指標の変化をみたところ、訓練生に低減傾向がみられた。一方、修了生の変化はほとんどみられなかった。 二次課題の成績をみると、訓練生において、歩行訓練の進行に伴い、余裕能力の増大が伺われ、心理的ストレスの評価への応用が示唆された。
  • 高橋 和哉, 池田  典弘, 木村 有希
    セッションID: 7
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【研究の目的】
     本研究は、交差点でのブロック敷設方法と敷設ブロックの種類を変更する事により、多くの視覚障害者が、安心して安全に横断できることを可能にし、日常的に無理なく交差点を利用できることを目的とする。
     具体的には、「視覚障害者誘導用ブロック設置指針」通知当時存在しなかったホーム縁端警告ブロックを活用する事により、交差点横断前の方向定位が確実にできることを実証する。

    【研究の先進性】
     ホーム縁端警告ブロックは、内方線を境に鉄道ホーム上の自身の位置を明確にすることにより、視覚障害者がホームから転落することを防ぐために開発されたブロックである。
     内方線を両足で同時に踏む事により方向定位がたやすくできる事に着目し、それを交差点に活用させることがこの研究の特徴である。
     交差点構造を大規模に改築せず、このブロックを敷設する事だけで、視覚障害者の交差点横断時の大きな不安要素を取り除く可能性がある。
     本研究で得られた知見は、従来の視覚障害者誘導用ブロックの設置基準の本格的な見直しに向けての第一歩として位置づけることができる。

    【今後の展開】
     本研究の成果に基づいて提案される新たな視覚障害者誘導用ブロックの敷設方式が各地に広まることで、視覚障害者(特に全盲者)にとって安心・安全な歩行空間の提供が実現する。
     また、昭和60年に定められ、今日まで大幅な見直しがなされてこなかった「視覚障害者誘導用ブロック設置指針」の改定の議論に対して、貴重なデータを提供し得る。
     本研究の成果をもって、JR荻窪駅周辺地区(延べ約40名/日の視覚障害者が行動している)で社会実験を行うことも目的とする。現在、代替手段(バス等)を利用している視覚障害者に対して、安全に移動できる環境を提供し、移動の選択肢を増やして、QOLを高める。  
  • 安藤 伸朗
    セッションID: 8
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     未曾有の大震災が東日本を襲った。こうした状況下で、視覚に障害のある方はどのようにしのいだのだろうか?私たちは何をしたのだろうか?今後私たちにできることは何であろうか?

    【方法】
    1.東日本大震災についての支援・情報を、各団体のホームページから聴取した。厚生労働省・日本内科学会・日本医師会・日本眼科学会・日本眼科医会・岩手医大・東北大学・福島県立医大・視覚リハ等。
    2.日本眼科学会の対応について検証する。

    【結果】
    1.ホームページにて、いち早く情報を提供したのは、厚生労働省・日本内科学会・日本医師会であった。日本眼科学会・日本眼科医会も少し遅れたが的確な情報を提供した。ホームページでアクセスする限り、視覚リハからはほとんど情報が得られなかった。
    2.日本眼科学会は東日本大震災に際し、迅速に対応した。
     ホームページにおいて、眼科医への情報のみならず、他科の医師・患者さんへ眼科疾患の診断や治療に関する多くの有益な情報を早くから提供した。そこにはジェネリックなどの情報が盛り沢山であった。
     日本眼科学会総会(5月14日、東京国際フォーラム)において、特別パネルディスカッション『大規模災害で我々に何ができるか?~東日本大震災と眼科医療~』を開催し、2000名を超す多くの会員が真剣に討論した。
     日本眼科医会と早くから共同で支援体制を築いた。
     岩手医大・東北大学・福島医大へ支援を行った。

    【結論】
     未曾有の災害は、また起こる。こうした状況下で何ができるか、何を為さねばならないか、平時から考え、対応策を検討しておくことが、今、私たちに求められている。
  • 中途視覚障害者をどのように把握し支援するか
    加藤 俊和
    セッションID: 9
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     東日本大震災では、視覚障害者がより過酷な状態に置かれていたことは言うまでもない。特に津波は、単独では避難できない視覚障害者にとってはすなわち死を意味する。また、避難ができたとしても、避難先で視覚障害者がたちどころに困るのはトイレで、周囲の人に手引きをお願いすることはもとより、トイレの形から紙の処理方法までいちいち聞かなければならない。このように避難所では過酷な状態となることが多く、阪神淡路大震災では半壊した自宅でも戻る人が相次いだが、大津波の被災では自宅に戻ることもできない。
     今回の大きな問題は、被災後数ヶ月が経っても、未だに多くの視覚障害者を私たちが把握できず支援もできていないことである。阪神淡路大震災においては、被害が比較的狭い場所に集中し、避難所も限られた範囲にあったので、比較的把握がしやすく支援もかなりできた。しかし今回は、被害の大きい3県の中央部にある点字図書館や盲学校と大部分の被災地とは100km以上も離れており、避難所も非常に広い範囲に点在している。
     しかし、個人情報の扱いの厳しさは16年前とは比較にならないため、任意団体では関係団体の名簿すら把握することが困難なことが予想された。そこで、日本盲人福祉委員会(日盲委)の下に対策本部を置く取り組みを行い、対策本部を設置することができたことによって、点字図書館の利用者リスト、視覚障害者団体名簿、盲学校同窓会名簿の入手がかなりスムーズにできた。そして厚生労働省や各県、市町村などの協力を得るのにも大きい力を発揮した。日盲委とは、当事者・施設・教育界が総力をあげるために1956(昭和31)年に結成され、障害者福祉の基礎となる数多くの成果をあげた組織である。今回の大震災の勃発とともに取り組んだ組織的な動きを検証する。
ポスター発表
  • 田邉 正明
    セッションID: P1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     2007年にButterworth-Heinemannから発刊されたLow Vision Manualの日本語訳が2010年に出版され、ロービジョンケアの有用な手引書となった。その中に拡大鏡の視野の公式が引用されており、レンズを通して見える文字幅をW(mm)、拡大鏡のレンズ径をA(mm)、レンズの屈折力をFm(D)、レンズと眼間距離をzとすると、W=A/(Fm・z)で表せるとされている。しかし、参考文献に記されている原著を調べると、その公式はレンズと加入度(調節力)の2枚レンズの等価屈折力Fe(D)を定義して、W=A/(Fe・z)とされていた。どちらの公式が正しいのかを調べるための証明をした文献が見当たらないことから公式の導出を試みた。

    【方法】
     レンズによってW(mm)の物体はW’(mm)の虚像を生じており、虚像W’から射出された軸外光線がレンズの開口部を通過し眼の入射瞳に入れば物体Wを見ることができる。そこで光路図を作成し、三角形の相似による比例式を利用し、加入度(調節力)と等価屈折力で式を整理することにより視野の公式を導出した。

    【結果】
     一般式はW=A/(Fe・z)であった。

    【結論】
     W=A/(Fm・z)が成立するのはW=A/(Fe・z)の特別な場合であった。それはレンズと物体間距離、もしくはレンズと眼間距離をレンズの焦点距離とした場合であった。前者の場合はレンズから眼を離していくと視野は狭くなっていくが、後者の場合はレンズと物体間距離を変化させてもレンズ径と同じ幅で書物を見ることができる。
  • 日本における視覚障害教育ガイドラインの提案について
    刀禰 豊
    セッションID: P2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     アメリカ等の視覚障害児教育の特徴的なガイドラインを見ると、我が国とは異なる規定、方法論など多様なアプローチの例がある。ヨーロッパ諸国のガイドライン等にも、独自の考え方が反映されている。我が国の特別支援学校(視覚)・盲学校等においても、各校の教育実践に基づいた教育の方向性・指針などが示されているが、視覚障害教育を統括するものではなく、明確な方向性は探りにくい。アメリカの州の事例なども参考とし、より明確な形でわが国でも基盤となるガイドラインの必要性は考えていかなければならない。我が国に有効な事例、考え方を広く提示し、現状の教育実践の中でも活用できるポイントを示し、障害(視覚障害)の実践において、他の領域の障害の関連性を考え、実践していく必要性や、その現状について明らかにする。

    【方法】
     実際に公開されている各種の視覚障害教育ガイドラインのいくつかを内容・項目等を分析するとともに、記載項目の特色・特徴を明らかにし、我が国に対する有効な事例等も考察する。

    【結果】
     実際のガイドライン等に見られる特徴は次のようなものであった。
    (1)現状の把握(アセスメント)、実際の運用までの系統的な考え方。
    (2)個の状況(障害把握)を含めた、詳細な規定。IEP等、法制上規定との関連記述。
    (3)支援対象の個人へのサポート方法、制度改善等についての記述など。
    (4)支援のための、詳細な規定、多様な関係性を認め、システムとしての介入(intervention)を可能とする考え方が基盤となっていること。

    【結 論】
     支援に対する考え方を考察することで、多くの有用な事例を見出すことができた。アセスメント、指導、援助、介入の各段階で、それぞれの効果を検証していく考え方は、我が国における視覚障害教育のアセットプログラムとして規定できるようである。多くの有用な観点を参考にしつつ、我が国の実情も考えながら、個の実情に根ざした有効なガイドラインの設定のためのモデル作りは今後ますます必要となってくると思われる。
  • 中村 龍次, 武田 貴子, 伊東 良輔
    セッションID: P3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     北九州市における「中途視覚障害者緊急生活訓練事業」では、対象者の自宅を週1回訪問、または通所により行う個別の「生活訓練」を中心に実施している。また、盲ろう者も訓練対象としている。
     単身の盲ろう者は、情報の入手や連絡など、様々な場面で他者が介入する必要があり、即時の対応が出来ないことも多い。そこで今回は、Eメールによる情報入手と連絡手段の確立を目標として実施したパソコン訓練について報告する。

    【事例プロフィール】
     年齢:50代 性別:女性 障害等級:視覚1級、聴覚1級
     コミュニケーション手段:触手話、手書き文字及び点字
     生活暦:ろう学校卒業後、7年間の工場勤務を経て自宅に戻り母と同居。母死亡後単身となり現在に至る。

    【実施内容】
     最初に、各支援機関(障害者地域生活支援センター、障害者視聴覚情報センター、歩行訓練士、当事者相談員、PCサポーター)による個別ケア会議を開催し、Eメールによる情報入手と連絡手段の確立を目標とした。
     訓練内容は、 (1)ブレイルメモ単体での文字入力と保存、(2)接続したブレイルメモでのPC起動と終了、(3) Windowsのメモ帳を使った文字入力と表示された内容の理解、(4)移動通信端末の接続と認識、(5)メールソフトを使用したメールの受信と返信方法の習得。以上の5項目について実施した。(1)は週1回の通所、(2)以降は週1回の訪問にて行い、盲ろう通訳ガイドヘルパー2名、当事者相談員、歩行訓練士が対応。必要に応じて、障害者地域生活支援センター担当者、PCサポーターの出席を要請した。

    【結果】
     訓練終了後、メールマガジン購読による翌日の天気についての情報入手と支援機関とのEメールによる連絡手段を確立することができた。

    【考察】
     盲ろう者の場合、通訳ガイドヘルパーを始め、支援に関わる関係者が多く、連絡調整等も煩雑であるが、障害者地域生活支援センターの担当者をコーディネーターとした支援体制の中で、当事者相談員と歩行訓練士が訓練の実施主体として積極的に提案することで、各支援機関の適切な連携が図られ、当事者相談員と歩行訓練士が訓練に集中できる環境ができたため、対象者の技術習得がスムーズに図られたと考えられる。
  • 畑野 容子, 原田 敦史, 菅原 美保
    セッションID: P4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     日本盲導犬協会では1週間の入所生活訓練である「視覚障がい短期リハビリテーション」(以下、短期リハ)を実施している。Bさんは復職を前提として休職期間中に短期リハに参加した。当協会では復職に向け、生活訓練を実施し、職場への働き掛けをおこなったが、結果的には復職することができず退職となった。本報告では今回の支援の経過を報告し、復職に至らなかった要因を考察していく。

    【ケース】
     Bさん、男性、20代前半、右)0.1 左)0.06、網膜色素変性症。
     2010年春ごろから急激に見えにくさを感じた。2009年3月に専門学校卒業後、配食サービスのC社にパートとして入社、半年後に契約職員となる。業務内容は、老人ホームなどの食事の調理・盛り付け、および後片付けなどである。

    【支援概要】
     当初の支援計画では、短期リハ前に職場への聞き取り・訪問を行う予定であった。しかし、担当者と連絡がとれず、職場訪問についても実施できなかった。短期リハ期間中は、訓練の様子を電話で連絡。修了後には本人、家族、C社、当センターの4者でケース会議を実施した。その場で、復職に向けた職場での工夫等について説明したが、“作業効率等が問題ではなく、パーソナリティに課題がある”との意見が出された。その後、C社への連絡、職安への相談等を行ったが状況は変わらず、Bさんから退職した旨の連絡が入った。

    【考察】
     当初、復職を難しくしている要因は見えにくいことへの理解不足から発生していると考えていた。そのため文字拡大やジョブコーチの導入案を提案したが、最終的にはパーソナリティの問題が提示され、復職への理解は得られなかった。また、職業安定所へ相談をしたが、Bさんを具体的にサポートする動きを引き出すことができなかった。本人も復職の意思はあったものの、C社との個別のやり取りの中でモチベーションが下がり、持続的な話し合いを持つことができなかった。C社の継続雇用の意思が低かったことも要因だが、短期リハ実施前にC社と意見交換ができていれば別な支援が行え、いずれ退職に至ったとしても一旦は復職する機会が持てたのではないかと考えている。また、C社とのやりとりに積極的に関わることで、Bさんへの心的な負担を減らす支援もできたのではないかという思いが残る。なお、Bさんは現在、理療免許取得のため勉強しており、3年後の就職を目指している。
  • -糖尿病視覚障害者とその他の視覚障害者の比較から-
    矢部 健三, 渡辺 文治, 喜多井 省次, 内野 大介, 角石 咲子
    セッションID: P5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     中途視覚障害者は、点字触読の習得に大きな困難を抱えるケースが少なくない。前回調査では、特に50代以降の中途視覚障害者で点字触読の習得が困難になることを報告した。今回は、糖尿病が点字触読の習得に及ぼす影響を検討するために、七沢更生ライトホームで実施した点字読み訓練の結果について、糖尿病網膜症による中途視覚障害者(「糖尿病群」)とその他の原因による中途視覚障害者(「非糖尿病群」)を比較して報告する。

    【方法】
     対象者:1991年度~2010年度の当施設入所利用者341名
     調査方法:訓練記録の参照、訓練担当者などへの聞き取り
     調査内容:基本属性、触知覚の状況、点字読み訓練の結果等
     実施時期:2011年3月~5月

    【結果と考察】
     点字読み訓練を実施した者は、219名で、糖尿病群:68名(31.1%)、平均年齢46.7歳、非糖尿病群:151名(68.9%)、平均年齢45.2歳であった。
     糖尿病群で点字読速度が実用段階(標準点字32マス18行1ページ10分未満)に到達した者は、6名(8.8%)である。非糖尿病群で実用段階に到達した者が24名(15.9%)であったのに比べると、その割合は大きく下回った。一方、糖尿病群で紹介程度や構成学習の段階で終了した者は42名(61.8%)である。非糖尿病群で紹介程度や構成学習の段階で終了した者が78名(51.7%)であったのに比べると、その割合は10%以上高かった。
     糖尿病群と非糖尿病群をそれぞれ、若年層(39歳以下)と中高年層(40歳以上)のグループに分けて比較すると、点字読速度が実用段階に到達した者の割合は、非糖尿病群の中高年層(9.6%)よりも糖尿病群の若年層(18.2%)が高かった。一方、紹介程度や構成学習の段階で終了した者の割合は、非糖尿病群の中高年層が63.8%だったのに対し、糖尿病群の中高年層は78.3%と大きく上回っていた。
     これらの結果から、以下の2点が示唆された。
    1)糖尿病が点字学習に及ぼす影響は、加齢に伴う影響よりも小さい。
    2)糖尿病群は、加齢に伴う点字学習への影響が、非糖尿病群より顕著に表れる。
  • -盲導犬使用環境の充実に向けて-
    久保 ますみ, 甲田 菜穂子, 森岡 那絵, 和田 孝文, 吉川 明, 中村 博文, 篠田 林歌
    セッションID: P6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     現在、視覚障がい者人口の約0.3%が盲導犬を使用している。しかし、「盲導犬に関する調査」委員会(2000)の調査によれば、1級の視覚障がい者の4.3%、2級の視覚障がい者の0.8%が「盲導犬を希望する」と回答している。そこで、盲導犬を使用していない視覚障がい者(障害等級1,2級)を対象に質問紙調査を行い、盲導犬希望者が盲導犬の貸与申し込みを実際に行うに至らない、または視覚障がい者が盲導犬を希望しない要因を明らかにする。

    【方法】
     リハビリテーション施設や視覚障がい者団体に協力を依頼し、質問紙を郵送または電子メールで送付・回収を行った。
     調査項目は、(1)性別・年齢・障がいの状況等の基本事項、(2)外出頻度や方法等の外出状況、(3)QOLの5段階評価、(4)盲導犬に関する既知事項や盲導犬を希望する度合い等の盲導犬に対する考えの4項目とした。

    【結果と考察】
     回答した視覚障がい者の60%以上が盲導犬について正しい知識を持っていた。
     盲導犬を持った場合の良い点として「行動範囲が広がる」「安全で速く歩けるようになる」といった項目が、盲導犬を持った場合に問題になる点として「盲導犬の世話や手間がかかる」「盲導犬との離別や死別がつらい」「お金がかかる」といった項目が多く選ばれた。
     盲導犬希望者と非希望者を比較してみると、居住地域が住宅街より農漁山村、視覚障がい以外に聴覚障がいをもつ回答者、就労者や主婦より学生の方が希望者は多かった。このような希望者の特性に合わせた盲導犬の育成について、今後、検討が必要だと思われる。
     また、視覚障がい者が盲導犬を持つ上で不安に感じている点について、いくつかの具体的な点があげられた。この点に焦点をあてたパンフレットを作成したが、盲導犬との生活をシミュレーションできるような場の提供等、盲導犬育成団体はもっと積極的な情報提供をすべきだろう。
  • -生活訓練を通してAさんのケース報告-
    笹山 夕美絵, 原田 敦志, 菅原 美保, 内田 まり子, 善積 有子
    セッションID: P7
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当協会では、仙台市在住者に対し、訓練事業委託元である仙台市の身体障害者更生相談所(以下、更生相談所)、相談事業を受託しているアイサポート仙台(以下、アイサポート)と連携して在宅訓練を実施している。今回は、ある当事業利用者に対して実施した生活訓練を通して、支援のタイミングと連携について、経過を報告する。

    【ケース】
    Aさん:糖尿病性網膜症(合併症:腎不全)50代単身女性。現在視力、右)0.01左)0

    【経過】
    2004年8月 地元病院で糖尿病性網膜症と診断。視力右)0.1左)0。
    2008年頃 東北大学病院(以下、大学病院)にて白内障手術実施。
    2009年10月末 視力低下右)0.08左)0。
    2010年5月 大学病院にて網膜剥離の手術実施。視力低下が続き右)0.02左)0。入院時に地域医療連携室より、生活保護ケースワーカーとアイサポートに連絡が行き、アイサポートから当協会へと繋がった。この間の生活では一人で外出が出来なくなり、買い物やゴミ捨ても出来ず、食事も作れず、友人にその全てを頼んでいたがとても不便だったとのこと。
    2010年6月 当協会の在宅訓練を開始。科目は歩行とADLで実施。このときアイサポートを通じて移動支援やホームヘルパーの利用、生活保護ケースワーカーから腎臓食の配達の手配等、生活基盤の安定を訓練と同時に進めた。
    2010年10月 視力は右)0.04左)0。
    2010年11月末 眼圧が上がり大学病院に入院。約2ヵ月訓練停止。訓練としてはいつでも再開できる旨を伝え、定期的に連絡をする。目も落ち着き右)0.06左)0。
    2011年2月 訓練再開。
    2011年3月 震災後、さらに視力が低下し右)0.01左)0。訓練継続中。

    【考察】
     Aさんは、医療現場から相談機関、訓練機関につながったことで生活基盤の安定と訓練を同時に進めることができた。特に、2010年11月末には眼圧が上がり入院したことで、若干精神的に落ち込んだようだが、“先のことを相談できる機関があったことで安心感があった”との発言が聞かれた。地域の社会資源が連携し、タイミングよくサービスを提供することで、視機能が徐々に低下していく中でも不安感が高くならず、訓練をスムーズに進めることができたと思われる。
  • 小田 浩一, 大塚 麻莉奈, 富田 紗央里
    セッションID: P8
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     既習の文字からなる日本語文を読むのに必要なサイズは、臨界文字サイズとして測定することができる。しかし、新しい漢字を学習するときにはその何倍が必要であろうか?伊藤ら(2009)は、小学生の事例から3倍程度の拡大が必要と報告している。本稿は昨年の報告の続報である。再分析の結果、明快な結果を得たので報告する。

    【方法】
     中国の繁体字と簡体字の中から日本人が知らない漢字を選び刺激文字とした。漢字の複雑さ(画数)を要因とし、8~10画、11画~13画、14~16画より各々3字ずつ選び、計9字を用いた。書体は华文宋体を用いた。文字サイズは視角9分~284分まで0.1log間隔、刺激の背景輝度は115.3cd/m2で、コントラストは98%であった。暗室にて最小の文字サイズで9文字をランダム順に提示し、被験者はそれを手元の3.8cm画の枠内に模写した。模写時間には制限を設けなかった。文字サイズを大きくしながら、すべての文字がつづけて3つのサイズで正しく書けるまで続けた。実験終了後に被験者に質問し、刺激漢字を見たことがあると答えた場合には分析から除外した。この実験と合わせて、各被験者には簡単な漢字かな交じり文を使った読書評価(MNREAD-J)をし、文字サイズを同様に変化させながら読み速度と誤読数を記録し、すらすら読める最小のサイズ=臨界文字サイズ(CPS)とぎりぎり読める読書視力サイズ(RA)を測定し、初見漢字を正しく書き取れた最小のサイズ(Scrutinizing Size; SS)と比較した。被験者は日本語を母語とする視覚正常の大学生11名、中国語は学習していなかった。

    【結果と考察】
     初見の漢字の書き取りが可能な最小の文字サイズ(SS)はCPSよりも3倍~6倍も大きく、漢字の画数によって単調に増加していた。このことは、既知の文字で測定した臨界文字サイズでは新出漢字の学習には不十分で3-6倍の拡大が必要であることを意味している。SSは、被験者の視力と刺激の複雑さに影響を受けて決まると考えられるが、重回帰分析の結果、被験者のCPSと刺激の最大線頻度で全体の分散の52%程度が説明された。

    【文献】
    伊藤雅貴・水谷みどり・小田浩一(2009). MNREAD-Jkによる学習環境の整備─漢字を学習する段階の児童の文字サイズの選択─. 第10回日本ロービジョン学会学術総会ポスター発表 P105,於札幌, 7/18-19.
  • -神奈川県内のFD(フライングディスク)の現状と七沢更生ライトホームにおける訓練について-
    塩澤 哲夫, 鈴木 修, 渡辺 文治, 加藤 正志, 斉藤 泰章, 矢野 季弘
    セッションID: P9
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     視覚障害者が参加する障害者スポーツ大会の種目として、陸上競技や水泳などが以前から行なわれてきている。また球技として、STT(サウンドテーブルテニス)やグランドソフトボール、フロアバレーボールなどが広く行なわれている。
     障害者スポーツ大会の種目に『フライングディスク』がある。全ての障害者が同じ条件で競技する唯一の競技で、安全性が高く、高齢者や視覚障害者にも適している。全国障害者スポーツ大会において「アキュラシー」と「ディスタンス」の2種目が公式競技となっている。
     神奈川県内でも、「かながわ障害者フライングディスク協会」が中心となって、大会や競技の普及、指導者養成などが行なわれてきており、県障害者スポーツ大会(フライングディスク競技会・全国大会予選)も同協会の協力により開催されるなど、盛んになってきている。

    【競技内容】
    ・「アキュラシー」は、スロー・コントロールの正確さを競う競技で、ディスリート・ファイブ(ゴール(内径91.5cmの円形)までの距離を5m)、ディスリート・セブン(ゴールまでの距離を7m)の2種目。視覚障害者の場合、ゴール後方から何らかの音源で方向を知らせ、また、スローイングラインには方向が判るようにアシストラインが設置される。
     障害区分や男女の別は無い。
    ・「ディスタンス」は、ディスクの飛距離を競う競技で、3投したうち最も遠い距離を競う。
     座位と立位及び男女別はあるものの、基本的にその他の区分はなく、視覚障害者も他の障害者と共に競技を行なっている。

    【七沢更生ライトホームでの取り組み】
     2007年度から「感覚訓練」の中で、身体を動かすプログラムのひとつとしてFD(フライングディスク)を取り入れてきた。運動経験の無い視覚障害者でも、繰り返し行なうことで、投げられるようになってくる。取り入れた年から利用者に積極的に大会参加も勧めてきており、退所後に全国大会に出場するレベルまで達した者もいる。
     訓練の場としては、アキュラシー競技専用の練習場所を建物内に確保し、また、神奈川県総合リハビリテーションセンター内のアーチェリー場にてディスタンス競技の練習を行なっている。
     これまでの訓練状況の中から、個人変化及び傾向など考察していきたい。
  • -弱視者の立場から-
    田邉 泰弘
    セッションID: P10
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     バリアフリー新法が施行されて5年が経過したが、公共建築物においては、相変わらず「見えないブロック」が数多く採用され、屋内や敷地内における弱視者の安全性やモビリティを大きく低下させている。特に、ガイドラインの遵守を求める行政指導で形状をJISに厳格に合わせたことが、触知性の改善とは裏腹に視認性をかえって低下させる結果となっている。その主な要因は、JIS規格に色に関する規定がないことと、点や線の突起部分のみを床面に取り付ける工法が容認されていることにある。  本来の正方形の面状のブロックと、視覚サインとしての有効性にどの程度の差があるのか、実際に敷設されている現場での観察と、物理心理学的な推察により検証を試みた。  その結果、仮に最もコントラストの大きい理想的な色の組み合わせを採用したとしても、点状の突起床材においては面状のブロックの10倍程度の視力が必要と考えられ、面状でなければ視覚サインとしての機能を十分果たさないことが、改めて確認された。
  • 三浦 貴大, 関 喜一, 岩谷 幸雄, 大内 誠
    セッションID: P11
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】
     視覚障害者は,視覚情報に頼ることが困難であるため,触覚や聴覚などの残存感覚を頼りに環境知覚をしている.特に,全盲の視覚障害者は,周囲環境中の障害物の存在や距離などを音情報によって知覚する障害物知覚に優れている.これらの能力により,環境中の音源の他,それ自身は音を発しない物体も知覚できる.これら聴覚による空間情報知覚の能力が高まることで,視覚障害者にとっての移動がより行い易いものになるはずである.

     この聴覚による空間知覚能力の訓練装置を,筆者らは提案してきた.この装置は訓練者の頭部の向きに応じて,訓練音をバーチャルにヘッドホン提示可能である.実環境での歩行訓練を行う前にこの装置を用いることで,訓練者の危険や恐怖心を軽減できると考えられる.本システムは視覚障害リハビリテーションの現場に,ソフトウェアとして提供され,臨床での効果検討がなされている.

     関らが昨年に本研究発表大会で発表したシステムは,訓練者の方向と位置をマウスを用いて入力した.一方で,より実践的な訓練を行うためには,頭部運動や歩行運動の考慮が不可欠である.本発表では,これらの運動を精密に取得しそれに応じた音響提示を行うため,実用/普及に耐えうるセンサについて明らかにし,今後のシステムへの実装の足がかりとすることを目的とする.

    【手法・進捗状況】
     検討対象は,加速度センサやジャイロセンサ,もしくはこれらが内蔵された装置類4種である.比較対象として,精度に定評がある高価格センサPolhemus Fastrakを用いた.頭部運動を模した往復回転運動をするモータに,プロペラ状の板を取り付け,一旦に比較対象,もう一方に測定対象のセンサを取り付けた.その上で,頭部運動のような動きが発生する際の角度検出能について検討した.また,得られた結果を元に,これらセンサ内蔵装置を訓練装置に生かす際,どのようなシステムのあり方が想定されるか,考察を行った.本発表では,これらについて報告する.
  • 堀江 智子, 原田 敦史, 中村 透, 国松 志保, 平林 里恵
    セッションID: P12
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     視覚障がい者のケアにおいて、医療から福祉へのスムーズな移行は、一つの課題である。そこで今回、自治医科大学付属病院眼科(以下眼科)およびロービジョン外来(以下LV外来)から日本盲導犬協会(以下当協会)に相談があり、急激な視機能低下にも関わらず、地域での支援を得て比較的スムーズな日常生活を送っているAさんの事例を報告する。

    【ケースプロフィール】
     宇都宮市在住、63歳女性、1級、糖尿病性網膜症、主婦、夫と2人で生活。一人息子は仕事の都合で月に1回帰宅。県内に妹がおり頻繁な交流がある。

    【眼科での治療経過と支援】
     1998年:糖尿病を発症。2003年:インシュリンを利用開始。2003年3月14日:初診。2008年6月:右視力(0.2)左光覚なし、身体障害者手帳(視野障害)2級取得、制度に関する情報を得る機会はなかった。 2010年7月23日:右視力(0.03)と低下。同年8月6日:右視力手動弁とさらに低下、眼科担当医よりLV外来へ相談、NPO法人タートルのMLより短期リハの情報を得て当協会へ連絡、Aさんへ情報提供。

    【当協会の支援内容と経過】
     同年8月9日:Aさんの妹より当協会へ連絡。 同年8月14日:Aさん宅で面談、自治医大MSWへ地域での支援情報提供を依頼。同年8月27日:自治医大医療相談室訪問、ヘルパー等の申請法などの情報提供を受ける。後日、自宅でケアマネージャーの面談を受ける。同年8月30日:短期リハ参加を前提に妹が同席し1泊2日の体験訓練を実施。同年10月17日~23日:短期リハに参加、終了後に障害者手帳1級を取得。同年11月23日~25日:短期リハのフォローアップとして、自宅近辺の歩行訓練、自宅で日常生活動作訓練を実施。障害者自立支援制度の手続きを行い、移動支援を利用。その他点字図書館で図書貸出しの手続きを支援。

    【考察】
     今回の事例では、眼科およびLV外来を通じて、早い段階から当協会と関わりを持てた。介護保険制度を活用し、リハビリテーション訓練を提供することで、本人のモチベーションを維持・向上することが可能となった。結果として日常生活上の課題が克服され、Aさんにとって生活しやすい環境を早期に整えることができた。受障初期の環境調整はその後のケースの生活に大きな影響を与える。受障後、早期の医療サイドからの情報発信はやはり重要であると思う。
  • 神屋 郁子, 野崎 正和, 牧 和義, 岩井 授身, 鈴木 佳代子, 小永吉 彩美
    セッションID: P13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【初めに】
     見えない・見えにくい状態になった時にまず、医療機関を受診される。そこで、医療関係者と福祉とが「つながる」ことが大切であると思われる(「つながる」には、福祉と医療関係者、福祉と患者さんと2つある)。そのためには、医療関係者に福祉施設で行っている相談事業、制度活用や視覚障害リハビリテーションを知っていただき、情報提供できる機会をつくること、医療関係者と顔の見える関係作りとを目的とし、2008年度から年に1度研修会を開催することにした。なお、研修会は京都ライトハウスと京都府視覚障害者協会と共催して行っている。

    【内容】
     日曜日(10時~16時)に京都ライトハウスにて開催。
    1.体験(視覚障害リハビリテーション、ロービジョンシミュレーションレンズを装用した見え方・食事)
    2.視覚障害当事者の話
    3.福祉制度の紹介・活用
    4.交流会
    以上の4つを軸とし毎年内容を変化させて開催している。

    【成果】
     このような研修会の場を待っていたという声が多くあり、参加者アンケートでも好評であった。当事者の話を聞けることや、視覚障害体験をすることで日々の業務の中での声かけのきっかけを知っていただけている。また、医療現場の様々な職種(医師、看護師、視能訓練士、検査員、事務員)の方と顔の見えるつながりがもてるようになってきた。そのおかげで、患者さんの紹介がスムーズに行われるようになってきた。そして、日々悩んでいることが自分だけでなく、他の職場の方も感じていることなどが分かる機会にもなっており、福祉と医療とを「つなぐ」研修会となっている。
  • 障害の有無に関わらず、共に自他を振り返り、生活を通して発見を続ける試み
    守山 正樹
    セッションID: P14
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     現代は情報化が進み、生活が便利になる一方で、視覚情報への依存が増え、生活が規格化し、生活をリアルに感じる機会が減ってる。しかし充実した生活のためには効率だけでなく、逆に生活の速度を下げてスローにし、多忙の中で見落されがちな細部を、振り返ることが重要である。本研究では手の触覚から生活を考え、生活の意味を再構築する試みを報告する。

    【原理】
     二次元イメージ展開法(TDM法)を出発点とした。TDMとは生活(食事、行動など)をイメージした際のキーワードをラベルに表示し、座標軸上でのラベルの配列/展開を通して、対象者が生活を振り返り、生活の全体をイメージ化する方法である。濾紙上で有機化合物を分離展開するペーパークロマトグラフィの原理が、イメージの分離展開に応用されている。一方、人は触覚に関連して「手で触れるだけで、身の回りの物品を瞬時に識別できる能力Haptic Glance」を持っている。よってキーワードを系統的に物品に置き換えられるなら、点字に頼らずにHaptic Glanceにより、誰でもが触覚から自己の生活を振り返り、全体像を構成できるはずである(実用新案第3117381号、内省思考支援用具)。

    【対象と方法】
    1 触知ピース開発;墨字も点字も使わず、練習なしに、手指の触覚を介して、誰でもが、生活に関する事項をイメージ化し、イメージを操作して生活の認識を表現・伝達できるよう、主な生活行動に対応した触知ピースの開発を試みている。
    2 座標軸開発;TDMの原法ではXとYの2軸を用いた。触知の場合もまずX、続いてY軸の2段階で展開図を作成する仕様とした。その後、より単純な展開が求められたことをきっかけに、現在ではX軸だけの直線的展開図法も開発している。

    【結果と考察】
     これまで晴眼者、視覚障害者、盲ろう者等を対象にワークショップを行い、普及と改良を進めて来た。障害の有無に関わらず「触知的なイメージ展開図から、気持ちが伝わる」との発言が得られている。マップが表すのは、考え方や行動習慣的な事柄である。その事柄が「もの」として表され、その「もの」に触れたとき、人は他者の心に触れるような感覚を得る、と推測される。
  • -南海地震に備えて協力者のネットワーク作り-
    別府 あかね
    セッションID: P15
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     高知県東部に在住している盲ろうの兄妹2名に「南海地震に備えての避難訓練」を実施した取り組みについて発表する。
     これは県福祉保健所と市町村の福祉事務所が『在宅要医療者への災害支援と協力者のネットワーク作り』を目的とした取り組みの一環である。
     この事例は、在宅酸素療養者(肺の疾患で常に酸素療法を必要としている者)の中に目と耳に障害のある盲ろう者がおり、その支援をする為に視覚障害者生活訓練指導員として関わった。
     最初に県福祉保健所の保健師、作業療法士、市福祉事務所の保健師、視覚障害者生活訓練指導員、盲ろう者通訳介助者(手話通訳士)2名の計6名を中心に、本人たちに対して南海地震とはどんな地震かという地震に対する基礎知識の勉強から始まり、地域の民生委員、自主防災組織、地区の常会との連携をとり、関係者に対しては簡単な手話講座や手引き講習を行い、最終的には実際に避難訓練を実施した。
     この盲ろう者は生まれつき耳に障害があり、後に視覚障害となったろうベースの盲ろう者であり、コミュニケーション手段は触手話(手話を触って会話する)である。県東部(高知市内から車で2時間)に在住で、近隣には盲ろう者向けの通訳介助者は在籍しておらず、この取り組み時も高知市内から通訳介助者を派遣して行った。そのため実際の災害時には通訳介助を受けられる可能性は低く、避難所でのコミュニケーションの方法についての課題が浮き彫りになった。この課題を解決するための取り組みを中心に報告したい。
     なお、この取り組みの実施期間は平成18年~平成19年である。4年前の取り組みであるが、雲仙普賢岳の火砕流からの復興、また今年3月に発生した東日本大震災のことも絡み、第20回大会が島原で開催される今、この取り組みが少しでも役に立つことができたらと思い発表することとした。
     また、この取り組みをする中で身近な地域に盲ろう者向け通訳介助者がいない問題の解決に向けて、平成22年度に2人の在住する市で「盲ろう者向け通訳介助者養成講座」を実施した。地震対策としてのネットワークづくりから始まった支援の輪は、盲ろう当事者が地域で生活しやすい環境の整備にも繋がった。このような、その後の経過も踏まえて報告したい。
  • 野崎 正和
    セッションID: P16
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     発表者は最近の6年間継続して、全盲で高次脳機能障害を併せ持つ3名の方たち、T氏(くも膜下出血:訓練期間1年半)、A氏(脳外傷:訓練期間2年)、B氏(脳梗塞:訓練期間3年半)のリハビリテーションを担当する機会を持った。今回の発表では、そのうちB氏の鳥居寮入所直後の約3週間の状況を、環境調整と訓練技法を中心に振り返ってみたい。
     さて、地方の小規模施設でこのような方たちのリハビリテーションに取り組みながら、以下のようなことを考えた。
     1点目は、我が国にどれくらいの数の対象者が居り、現在どのような支援を受けているのか。そして、今後どのような支援が必要なのかということである。それがわからない現状では、「見えない障害・谷間の障害」と言われていた高次脳機能障害者への支援が進む中で、視覚障害と高次脳機能障害を併せ持つ方たちが、置き忘れられていくのではないかという不安がある。
     2点目は、名古屋市総合リハビリテーションセンターや七沢更生ライトホームなど先行施設の優れた取り組みに学びながら、それぞれの障害特性をよく知った上で、それが重複したときにどのような状態になるのか、受傷後の経過年数による差や個人差も踏まえて理解することである。当然のことながら、通常の視覚障害リハビリテーションの知識だけでは対応できないものであった。
     3点目は、上記の点に関連して、指導員の訓練技法や当事者の対処技法についてである。例えばADL自立の段階で有効な訓練技法(行動分析等)はどのようなものか、あるいは対人関係が課題となる場面ではどのような対処技法(SST等)が有効かというような点について研究する必要がある。
     4点目は、施設経営との関係である。視覚障害と高次脳機能障害を併せ持つ方のリハビリテーションに取り組むことは、多量のマンパワーを必要とする。これは障害者自立支援法下での小規模施設にとって非常に厳しい現実であり、残念だが当施設における今後の受け入れはかなり難しいと思われる。               
  • -初めての試みから見えてきたもの-
    佐藤 洋子, 坂部 司
    セッションID: P17
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     当センターでは平成21年9月に、NPO法人愛知視覚障害者援護促進協議会と連携し、TDLルーム(日常生活技術訓練室)を開設した。ここでは数名の希望者に点字の触読の指導を行っているが、指導者は視覚障害当事者でもある、当センター職員。当センターにとっても指導者にとっても、点字触読指導を行うことは初めての試みで、訓練生と接する中で、視覚障害当事者が指導を行うことの利点と克服するべき課題が見えてきた。本発表ではこうした利点と課題、当センターの取り組みの一端を紹介する。
  • -ケース報告-
    安山 周平, 原田 敦史
    セッションID: P18
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     静岡県の訪問自立支援事業(以下、事業)において、白杖を使用せず、夜間中心に訓練を開始したAさんが、最終的に白杖を持つに至るまでの経過を報告する。

    【ケース】
     50代女性、娘と孫2人の4人家族。視神経炎により視力右0、左0.03、左眼中心に有効視野あり。受障後7年経過。外出が少なく家族とだけ関わる生活。

    【訓練経過】
     2010年初め、Aさんは行政の福祉窓口に利用できるサービスの相談を行う中で事業を知り、内容を理解しないまま訓練を申込んだ。4月の面接では、質問に答えたくないという態度が随所にみられ、近隣住民に知られたくないと、特に白杖使用と日中訓練に強い抵抗を示した。一方で単独歩行に対する希望は強く、あえて白杖を使用せず、夜間中心に5月から9月まで計7回の訓練を実施した。訓練初期は、手引き歩行を中心に視機能と判断力評価に時間を割いた。結果、ライト使用により障害物や白線を視認できることが分り、保有視覚の活用法を指導することで単独で歩く個所を増やしていった。見え方を理解し、判断に自信がつくと、ネガティブな言動や不安感が減り、受障後の生活や思いを話す機会が多くなった。話の中で日中を拒む理由に羞明があることも分かったため、すぐに遮光眼鏡を紹介し、日中訓練を提案した。Aさんはサングラスと見た目に違いが少ないことで訓練を快諾し、夜間と同様に白杖なしで移動範囲を広げていくことができた。その後、徐々に白杖の話を受け入れるようになり、家族との外出に白杖を携帯できるまでになった。この段階で白杖訓練の希望を口にし始めたが、訓練には踏み切れない状態であった。一度訓練を終了し経過を見守ることとした。

    【考察】
     白杖の使用に抵抗を感じながらも、現状を何とかしたいと考える視覚障がい者は多くいると考えられる。本ケースでは、生活環境の中で視機能を評価し、白杖を持たなくても出来ることと持たなければ出来ないことを本人が理解することで、外出機会を増やすことができ、白杖への抵抗感を減らしていくことができた。Aさんはその後、再度訓練を申込み、今年5月から白杖での訓練を実施している。視機能を活用できる方であれば、本人の希望に沿って白杖を使用しない形で訓練を開始することは、より安全な白杖歩行に繋げる一つの有効な手段であると考える。歩行訓練=白杖歩行ではなく、ケースに合わせ柔軟な対応が必要だと、改めて考えさせられたケースとなった。
  • -その2-
    山本 潔, 高柳 泰世
    セッションID: P19
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     前回、本郷眼科・神経内科での眼科診療において、眼科医を窓口として永年実施している視覚障害リハビリテーション相談について発表しました。今回は、平成22年度における実績をとおして視覚障害者に対する相談や訓練に携わる者(本会では視覚障害リハビリテーションワーカーと称している)による眼科リハビリテーション(本会では視覚代行リハビリテーションと称している)の必要性と、視覚障害リハビリテーションワーカーの資格化への理解を深めるために発表します。
  • てんじどうにゅうきとしてのえるえるらいたー
    石川 充英, 伊藤 和之, 伊藤 和幸, 山崎 智章, 長岡 雄一
    セッションID: P20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     中途視覚障害者の文字入力システムとしてL.L.Writerを開発し、実証検証を行っている。
     今回、点字タイプライターの初学者1名を対象に、L.L.Writerを入力練習時の導入機として使用した。この事例について、使用した訓練プログラムと導入期としての効果について報告する。
  • 松谷 直美
    セッションID: P21
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     これまでアッシャー症候群の盲ろう者に対しての支援活動をとおして、先天性聴覚障害の人が就労中に網膜色素変性の視覚障害を発症し,視野狭窄や視力の低下を伴うアッシャー症候群となる。それまで担ってきた業務に支障をきたし職場の配置転換が行われた後、職場を去らざるを得ない状況に至る。人生を諦めて自宅で悶々とした生活をする状況に至る。本研究は、聴覚障害者として就労継続中進行性の視覚障害を併発する盲ろう者が就労継続するためには、どのような支援が必要なのかを明らかにすることを目的とする。

    【対象】
     平成18年厚生労働省の「身体障害者実態調査」による全国の盲ろう者は22,000人であり、その盲ろう者のうちアッシャー症候群の盲ろう者の数や実態は把握されていない。また、アッシャー症候群の盲ろう者は、ある程度限定されているので、関係団体の活動に参加するアッシャー症候群の盲ろう者を選出する。

    【方法】
     調査方法は、視覚障害が進行しているにもかかわらず就労できているA氏にインタビューを行い、本人属性・日常生活・職場での就労状況等の聴取を行った。及び雇用主に対してインタビューを行い職場環境等の聴取を行った。

    【結果】
     通勤可能な居住、触覚を利用した業務内容、就労を通して社会参加する姿勢、意欲等で就労継続は可能になる。また、信頼できる人の存在も大きな支えとなる。
     雇用主の実践として、工場内の照明を高照度、手元照明、工場の整理整頓、触覚を利用した業務内容の整備等が見られた。

    【考察】
     疾病当初、苦悩するA氏を支えた人の存在、A氏の社会参加する姿勢、意欲等がある。及び雇用主は、A氏の障害特性に合わせて職場環境の整備等を実践する等、雇用主及びA氏の実践等があれば、就労継続可能である。
  • 新井 千賀子, 尾形 真樹, 山中 幸宏, 折原 唯史, 平形 明人
    セッションID: P22
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     眼鏡式拡大鏡は両手の作業が可能となることや広い視野が確保できるなどの利点がある。一方で適切な倍率を提供するレンズ度数にすると常用できない眼鏡になり、遠用の矯正眼鏡が必要な場合には眼鏡の掛けかえが必要となる。本症例は、眼鏡式拡大鏡を希望していたが遠視が強く遠用眼鏡も必要としていた。また周囲にわからない様に道具を使用したいという外見上の希望を持っていた。

    【症例】
     39歳の白子の男性で読み書き時の疲労と以前に処方された補助具の再調整がロービジョンケアの主訴であった。手持ち拡大鏡(16D)、単眼鏡6倍、眼鏡式拡大鏡として遠方の矯正眼鏡に9Dの小玉レンズが入ったものを使用していた。視力はVD=0.2(0.2×KB)(0.3×+4.5cyl-1.5ax180)、VS=0.15(0.15×KB)(0.2×+3.5cyl-1.0ax180)で、遠用眼鏡は低矯正であった。母国語が英語のためMNREAD英語版で読書評価を両眼で実施した。その結果、臨界文字サイズは1.0logMAR(30cmの視距離で28ポイントの文字サイズ)、最大読書速度は203 単語/分であった。この結果より、9ポイントの文字を読むには約10Dの拡大が必要であることが判った。

    【補助具の検討】
     遠視の低矯正が加齢に伴った調節力の低下に対応していない事が疲労の原因であると考えられた。そのため、本症例は遠用の矯正眼鏡を装用して読書用の拡大をする必要があった。遠方視と近方視を繰り返す作業に機敏に対応するためにクリップオン型で拡大度数を加える方法を検討した。しかし、より目立たたず使用したいという要望があったためマグネットで拡大度数のレンズを装着する方法を検討し作成を依頼した。レンズの厚みと重さ、周辺の収差の影響を回避するために、シームレスレンチキュラー(内径40mm)の高屈折のレンズ使用し本体眼鏡への装着の問題を解決した。
  • 小林 章
    セッションID: P23
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今日,石突の選択肢が増えているにも関わらず,多くの人は購入時に白杖に付属していた石突を使い続け,他の複数の種類の石突を試す経験を持つ人は少ないと思われる.本研究では,国立障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科(以下,視覚障害学科)の卒業研究において実施した石突の使用効果に関する研究結果を整理し,主に石突の構造の違いによる特性を提示した上で,今後の検討課題を明らかにする.

    【方法】
     5件の卒業研究の結果を,石突の種類,課題別にパフォーマンス及び使用感(内観)をまとめ,石突の構造による特性について考察した後,今後さらに検討するべき課題を明らかにする.
     実験で使用した石突はノーマル,マシュマロ,ティアドロップ,ローラー,ジャンボローラー,ボール,パームの7種類であった.課題はすべてコンスタントコンタクトテクニックによる直線(直進)歩行,交差点の縁石発見,及び伝い歩きであった.それぞれの試行において,歩行所要時間,引っかかり及び逸脱の頻度を測定した後,使用感についての内省を取った.被験者は全て,歩行技術習得済みの視覚障害学科学生であった.

    【結果】
     アスファルト路面の移動では,ノーマルの引っかかり頻度が有意に多く,その結果歩行速度も遅くなった.ジャンボローラーは引っかかりの頻度は少ないが,歩行速度は遅くなった.路面につなぎ目があるインターロッキング上では,ノーマルが最も他の石突と比較して有意に多く引っかかり,パームは最もひっかかりが少なかった.引っ掛かりの頻度は移動速度に影響を及ぼした.

    【結論】
     接地面積の大きい石突は引っ掛かりが少なく,移動速度を上げやすいが,石突本体が大き過ぎると速度が落ちる.石突を持ち上げる必要があるタッチテクニックでは石突の重さが影響する可能性が思慮されることから,別途検討が必要である.
  • 内田 まり子, 岸 政彦, 原田 敦史
    セッションID: P24
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     公益財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センター(以下「訓練センター」)では、東北6県において視覚障害リハビリテーション(以下「視覚リハ」)事業を実施してきた。その中でも、山形県立河北病院(山形県西村山郡河北町、以下「河北病院」)においては数年にわたり継続的な連携を持つことができたので報告する。

    【事業概要】
     山形県では2005年から視覚リハを知ってもらうことを目的とした講習会、2006年から期間限定の訪問訓練事業を行なってきた。2007年からは早期からの関わりを目指して、病院での視覚リハ講習会を実施した。

    【経過】
     河北病院では、2007年から毎年、講習会を行なっている。内容は、2007年は白杖歩行の基礎講座、2008年は白杖・パソコン・日常生活動作・点字についての視覚リハ体験、2009年は山形県立点字図書館・塩原視力障害センターと協力して施設や利用方法について紹介、2010年は視覚リハ体験、参加者同士の情報交換を行なった。参加者は増減しながら当事者が10名程度、家族や医療スタッフを合わせると20名から30名程度が集まっている。
     訪問訓練では、2007年度に3名、2008年度に1名、2010年度に1名が河北病院の紹介で事業を新規利用した。

    【考察】
     講習会の会場となる病院を探すのは難しかったが、河北病院の視能訓練士とは仙台市のロービジョン勉強会で顔を合わせたことがあり、依頼しやすかった。
     病院で講習会を実施するにはドクターや視能訓練士の協力が不可欠だが、河北病院では視能訓練士が患者との間をつなぎ、講習会への参加を促した。講習会にはドクターやナースも参加した。終了後には患者の感想を聞き、次の講習会に活かすことができた。また、生活の様子を聞いて、必要な場合には訪問訓練を紹介した。
     視能訓練士がキーパーソンとなったことで、講習会事業が継続でき、訪問訓練の利用者が増加した。利用者の中には日常生活に不便が出始めた段階の患者もおり、早期から視覚リハを生活に取り入れてもらうことができた。 遠隔地であるため期間限定で視覚リハを行なうことしかできない訓練センターにとっては、日常的に関わりを持ち、普段の様子をよく聞いている視能訓練士の存在は大変重要である。
  • -長崎市障害福祉センターでの取り組みと、今後の課題-
    古場 かおり, 西川 研, 廣岩 秀徳, 馬渡 仁美, 宮本 マキ子, 永井 和子
    セッションID: P25
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     「長崎市障害福祉センター(以下、当センター)」は、長崎市における在宅障害福祉の拠点的な施設として、地域で暮らす障害児・者のかたと、その家族を主な対象に、平成4年4月からサービスを開始した。しかし、現実には視覚障害に関する専門知識を持った職員不在のままのスタートとなった。そのため約20年間の視覚障害者・盲ろう者の相談は、その都度、県の専任職員の視覚障害生活訓練等指導者へとつないだ。その中で、盲ろう者への訓練については、当センターの手話通訳者と県の職員とが一緒に、訓練を進めてきた。
     視覚障害者・盲ろう者への福祉サービス提供の必要性から、 当センターは平成17年度、18年度には点字教室、平成20年度には視覚障害者に対する生活訓練を、個人の視覚障害者生活訓練等指導者に委託。平成23年3月、当センター開所以来、視覚障害者・盲ろう者の相談をつないできた県の専任職員が退職。それを機に、県の専任職員のポスト自体がなくなってしまったこともきっかけとなり、 平成23年1月から視覚障害者生活訓練等指導者を嘱託職員として雇用。視覚障害リハビリテーションに関する相談・支援業務を開始した。業務開始から約半年。当センターの視覚障害者・盲ろう者に対する福祉サービス提供について、今後の課題が見えてきた。
  • 堀内 恭子
    セッションID: P26
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     聾学校高等部2年生になる盲ろう児Mへの支援を振り返り、教育や福祉機関がどのように関わりを持ってきたのかを明らかにすることで、課題や今後の支援のあり方を考察する。

    【事例】
     男性、17歳。網膜芽細胞腫、両眼共全盲(義眼)。視覚障害1級、聴覚障害2級。1才11ヶ月時に左眼摘出、4才11ヶ月時に右眼摘出、3歳時に聴覚障害判明。感音声難聴(聴力 右93dB 左91dB)。両親、姉と同居。コミュニケーション手段は、触手話、指文字で受信。一部の音声の認識可能。手話や指文字で発信し、一部音声言語有り。
     平成17年度から22年度まで、年間4回から8回までと非常に少ない回数ながらもMに対して関わりを持ってきた。自宅からスクールバス乗り場までの歩行訓練やメール環境の整備、メールの導入、手引きのされ方の訓練などを実施した。聾学校での授業の様子や盲学校での教育相談の様子を見学したり、教員や保護者を交えてのカンファレンスも行った。教員や保護者、福祉の各々の視点から、Mの実態や課題などを互いに共有し、その都度各々が行える役割を確認しながら関わってきた。中学部からは盲学校の歩行訓練士の教員が教育相談や自立活動の時間にMの指導を担当することとなり、共同で手引きの冊子を作成することもできた。
     また、T盲学校に所属する他の盲ろう児や教員が、M宅にてブレイルセンスプラスの指導を行ったり、T大学研究所から研究員がパソコンの指導に訪問した際に同席することで、Mの自宅でのパソコン環境や操作方法を確認することができた。

    【考察】
     非常に関われる回数が少ないという現状が発表者の最大の課題では有るが、保護者や教員との連携を取りながら、些細ではあるが、Mの状態や課題の把握、互いの情報提供などが行えてきたのではないかと思う。しかし、まだまだ保護者にかかる負担も大きく、今後の連携や体制作りをいかに進めていくかが課題であると思われる。
  • -視覚障害者の自立および社会参加を促進するための当協会での取り組みについて-
    南 奈々, 児嶋 秀夫
    セッションID: P27
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     当協会は、任意団体として1981年に発足した。その後、2005年に財団法人九州盲導犬協会として福岡県糸島市東に総合訓練センターを移転し、2010年に公益財団法人としての認定を受けて現在に至る。
     当協会では、身体障がい者の自立および社会参加を促進するため、事業内容として盲導犬の育成・訓練、盲導犬の無償貸与、視覚障がい者と盲導犬との歩行訓練等の生活指導、身体障害者補助犬の普及啓発活動を行っている。これに加え、今年度より佐賀県から中途視覚障がい者緊急生活訓練事業の委託を受け、視覚障がい者への歩行訓練等の生活訓練を実施することとなった。
     今回の発表では、当協会の取り組みを報告し、これからの視覚障がい者の自立および社会参加を促進するための盲導犬協会のあり方について提案したい。
  • -視覚障害者の新たな活動にコーチング-
    松永 秀夫, 佐藤 喜代美
    セッションID: P28
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    「視覚障害者コーチ養成プログラムの効果」
    日本視覚障害者コーチ協会(JBCA)

    【目的】
     ・視覚障害者の新たな職域の開発
     ・視覚障害者の社会参加の促進とQOLの向上

    【コーチングとは?】
    1.Wikipedia
    ・コーチングとは:人材開発のための技法のひとつ
     「コーチ」(COACH)とは馬車を意味し、馬車が人を目的地に運ぶところから、転じて「コーチングを受ける人(クライアント)を目標達成に導く人」を指すようになった
    2.JBCAのコーチングの特徴
    ・クライアントのそのままを認め、信頼する
    ・言葉の奥にある気持ちや思いをきく
    ・クライアントやコーチのあり方や生き方を大事にする
    ・クライアントがクライアントを理解するのをサポートする
    3.なぜ視覚障害者がコーチングを学ぶのか?
    ・コーチングはクライアント(依頼者)の話に耳を傾ける仕事
     「見ること」よりも「聞き取る力」「心で感じること」を要求される
    ・職種としての利点
     電話で行なう場合が多く、外出の負担も少なく、視覚障害によるデメリットが少ない

    【修了者の社会参加活動事例】
    ・有料クライアントをもちプロコーチとして活動
    ・相談事業に従事する者が、当事者にコーチングを活かし対応
    ・一般企業に所属する者が部下などとの人間関係に活用
    ・コーチングサロンを開催し、定期的な活動
    ・キッズコーチング、子育てコーチングのグループを立ち上げ活動

    【コーチングテーマの実例】
    (中途視覚障害者の葛藤等)
    ・白杖携帯への抵抗感
    ・視覚障害になったことを近隣に知られたくない
    ・自己肯定感が低くなり人生に価値を見出せなくなる
    ・自分は障害があるので、何をするにも常にマイナスからのスタートだと感じる
    ・対等な機会を失ったと感じる
    ・障害のない人には絶対に追いつけない、適わないと感じる
  • 中村 孝文, 田内 雅規, 友本 祐子
    セッションID: P29
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     現在用いられている視覚障害者誘導用ブロックは、多様な設置路面環境で使用できる。しかし、昨今では本来の機能を損なわずに利用者以外の通行者等も配慮した点字ブロックが必要とされている。そこで本研究では平滑な路面での使用を想定し、現状の5mmよりも低い線状ブロックを作成し、視覚障害者がその上を歩行する際の機能性評価を試みた。

    【実験方法】
     突起頂上と底辺の幅をJIS型と同じにし、高さのみ5.0、4.5、4.0、3.5、3.0mmとした5種類の線状ブロックを用い、幅60cm×長さ7mの歩行路を設置した。単独歩行に慣れた視覚障害者14名に両足載せで歩行路を歩いてもらい、両足逸脱の割合(両足逸脱があった試行数÷試行数)と歩きやすさに関する内観(1.方向のとりやすさ、2.足裏への当たりの強さ感、3.足首のぐらつき感、4.体全体のぐらつき感(不安定感)、5.線状ブロックとしての総合的歩きやすさ感)を測定した。試行は各歩行路につき5~6回行った。

    【結果】
     歩行中に両足逸脱した割合は5~14%であったが、高さとの関連は見られなかった。方向のとりやすさは突起高さと共に増加し、3.8mmでまあまあとりやすいとの評価に達した。足裏への当たりの強さ感も突起高さと共に増加し、高さ3.7mmで強くも弱くもないとの評価となった。足首と体全体のぐらつき感は高さと共に増したものの、何れの高さでもまあまあ安定するとの評価であった。線状ブロックとしての総合的歩きやすさ感は突起高さと共に上昇する様子は見られたが、3.5mm以上でまあまあ歩きやすいとの評価となった。

    【結論】
     突起の高さが増すと方向の取りやすさが増す反面、足裏への当りの強さ感や体や足首のぐらつき感も増加するが、3.7mm~3.8mmの高さであれば歩行時の機能を損なわず当りも強くない歩きやすい線状ブロックとして使用できる可能性が示された。
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