視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第20回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 in 九州
セッションID: P5
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ポスター発表
中途視覚障害者の点字触読習得を阻むものはなにか?
-糖尿病視覚障害者とその他の視覚障害者の比較から-
*矢部 健三渡辺 文治喜多井 省次内野 大介角石 咲子
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抄録

【目的】
 中途視覚障害者は、点字触読の習得に大きな困難を抱えるケースが少なくない。前回調査では、特に50代以降の中途視覚障害者で点字触読の習得が困難になることを報告した。今回は、糖尿病が点字触読の習得に及ぼす影響を検討するために、七沢更生ライトホームで実施した点字読み訓練の結果について、糖尿病網膜症による中途視覚障害者(「糖尿病群」)とその他の原因による中途視覚障害者(「非糖尿病群」)を比較して報告する。

【方法】
 対象者:1991年度~2010年度の当施設入所利用者341名
 調査方法:訓練記録の参照、訓練担当者などへの聞き取り
 調査内容:基本属性、触知覚の状況、点字読み訓練の結果等
 実施時期:2011年3月~5月

【結果と考察】
 点字読み訓練を実施した者は、219名で、糖尿病群:68名(31.1%)、平均年齢46.7歳、非糖尿病群:151名(68.9%)、平均年齢45.2歳であった。
 糖尿病群で点字読速度が実用段階(標準点字32マス18行1ページ10分未満)に到達した者は、6名(8.8%)である。非糖尿病群で実用段階に到達した者が24名(15.9%)であったのに比べると、その割合は大きく下回った。一方、糖尿病群で紹介程度や構成学習の段階で終了した者は42名(61.8%)である。非糖尿病群で紹介程度や構成学習の段階で終了した者が78名(51.7%)であったのに比べると、その割合は10%以上高かった。
 糖尿病群と非糖尿病群をそれぞれ、若年層(39歳以下)と中高年層(40歳以上)のグループに分けて比較すると、点字読速度が実用段階に到達した者の割合は、非糖尿病群の中高年層(9.6%)よりも糖尿病群の若年層(18.2%)が高かった。一方、紹介程度や構成学習の段階で終了した者の割合は、非糖尿病群の中高年層が63.8%だったのに対し、糖尿病群の中高年層は78.3%と大きく上回っていた。
 これらの結果から、以下の2点が示唆された。
1)糖尿病が点字学習に及ぼす影響は、加齢に伴う影響よりも小さい。
2)糖尿病群は、加齢に伴う点字学習への影響が、非糖尿病群より顕著に表れる。

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© 2011 視覚障害リハビリテーション協会
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