視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第20回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 in 九州
セッションID: P8
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ポスター発表
新しい漢字の認識に必要な文字の大きさ
*小田 浩一大塚 麻莉奈富田 紗央里
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抄録

【はじめに】
 既習の文字からなる日本語文を読むのに必要なサイズは、臨界文字サイズとして測定することができる。しかし、新しい漢字を学習するときにはその何倍が必要であろうか?伊藤ら(2009)は、小学生の事例から3倍程度の拡大が必要と報告している。本稿は昨年の報告の続報である。再分析の結果、明快な結果を得たので報告する。

【方法】
 中国の繁体字と簡体字の中から日本人が知らない漢字を選び刺激文字とした。漢字の複雑さ(画数)を要因とし、8~10画、11画~13画、14~16画より各々3字ずつ選び、計9字を用いた。書体は华文宋体を用いた。文字サイズは視角9分~284分まで0.1log間隔、刺激の背景輝度は115.3cd/m2で、コントラストは98%であった。暗室にて最小の文字サイズで9文字をランダム順に提示し、被験者はそれを手元の3.8cm画の枠内に模写した。模写時間には制限を設けなかった。文字サイズを大きくしながら、すべての文字がつづけて3つのサイズで正しく書けるまで続けた。実験終了後に被験者に質問し、刺激漢字を見たことがあると答えた場合には分析から除外した。この実験と合わせて、各被験者には簡単な漢字かな交じり文を使った読書評価(MNREAD-J)をし、文字サイズを同様に変化させながら読み速度と誤読数を記録し、すらすら読める最小のサイズ=臨界文字サイズ(CPS)とぎりぎり読める読書視力サイズ(RA)を測定し、初見漢字を正しく書き取れた最小のサイズ(Scrutinizing Size; SS)と比較した。被験者は日本語を母語とする視覚正常の大学生11名、中国語は学習していなかった。

【結果と考察】
 初見の漢字の書き取りが可能な最小の文字サイズ(SS)はCPSよりも3倍~6倍も大きく、漢字の画数によって単調に増加していた。このことは、既知の文字で測定した臨界文字サイズでは新出漢字の学習には不十分で3-6倍の拡大が必要であることを意味している。SSは、被験者の視力と刺激の複雑さに影響を受けて決まると考えられるが、重回帰分析の結果、被験者のCPSと刺激の最大線頻度で全体の分散の52%程度が説明された。

【文献】
伊藤雅貴・水谷みどり・小田浩一(2009). MNREAD-Jkによる学習環境の整備─漢字を学習する段階の児童の文字サイズの選択─. 第10回日本ロービジョン学会学術総会ポスター発表 P105,於札幌, 7/18-19.

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© 2011 視覚障害リハビリテーション協会
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