視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第20回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 in 九州
セッションID: P16
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ポスター発表
全盲で高次脳機能障害を併せ持つ方の訓練
*野崎 正和
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抄録

 発表者は最近の6年間継続して、全盲で高次脳機能障害を併せ持つ3名の方たち、T氏(くも膜下出血:訓練期間1年半)、A氏(脳外傷:訓練期間2年)、B氏(脳梗塞:訓練期間3年半)のリハビリテーションを担当する機会を持った。今回の発表では、そのうちB氏の鳥居寮入所直後の約3週間の状況を、環境調整と訓練技法を中心に振り返ってみたい。
 さて、地方の小規模施設でこのような方たちのリハビリテーションに取り組みながら、以下のようなことを考えた。
 1点目は、我が国にどれくらいの数の対象者が居り、現在どのような支援を受けているのか。そして、今後どのような支援が必要なのかということである。それがわからない現状では、「見えない障害・谷間の障害」と言われていた高次脳機能障害者への支援が進む中で、視覚障害と高次脳機能障害を併せ持つ方たちが、置き忘れられていくのではないかという不安がある。
 2点目は、名古屋市総合リハビリテーションセンターや七沢更生ライトホームなど先行施設の優れた取り組みに学びながら、それぞれの障害特性をよく知った上で、それが重複したときにどのような状態になるのか、受傷後の経過年数による差や個人差も踏まえて理解することである。当然のことながら、通常の視覚障害リハビリテーションの知識だけでは対応できないものであった。
 3点目は、上記の点に関連して、指導員の訓練技法や当事者の対処技法についてである。例えばADL自立の段階で有効な訓練技法(行動分析等)はどのようなものか、あるいは対人関係が課題となる場面ではどのような対処技法(SST等)が有効かというような点について研究する必要がある。
 4点目は、施設経営との関係である。視覚障害と高次脳機能障害を併せ持つ方のリハビリテーションに取り組むことは、多量のマンパワーを必要とする。これは障害者自立支援法下での小規模施設にとって非常に厳しい現実であり、残念だが当施設における今後の受け入れはかなり難しいと思われる。               

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© 2011 視覚障害リハビリテーション協会
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