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【背景】
本学の視覚障害学生の約8割がロービジョン者用教材を必要としている。そこで、教材作成室では、点字化やDAISY化に加え学習資料の拡大印刷や電子データ化にも力を注いでおり、三通りの文字サイズを基本にきめ細かくニーズに対応している。そのためのツールとしては、主にMicrosoft Wordを使用しているが、文字を一律に拡大するとレイアウトが崩れ、その調整に時間と労力を要するという難点がある。
【目的】
近年、様々な形式の電子書籍が誕生している。中でも米国の標準化団体IDPFが仕様策定を行っているEPUBは、画像、音声、リフロー等に対応し、どのような媒体でも閲覧が可能なオープンな電子書籍フォーマットである。こうしたことから、EPUBの活用は、教育現場におけるロービジョン者用教材の作成の簡便化、効率化をもたらすものと考え、その導入を目指して検討を進めた。
【方法】
EPUB形式の電子データを作成・編集するソフトについての情報を収集し、その結果、教材作成の手段として適していると思われる三つのソフトウェア(うち二つは組み合わせて使用)を選定した。2011年の夏から秋にかけて、これらのソフトを用い、解剖学教科書等を素材にして教材作成を試行した。EPUBデータ及びPDFデータの教材を試作する過程で各ソフトの機能を確認するとともに利点と問題点を挙げ、どちらのソフトがより効率的に活用できるかを比較検討した。
【考察】
教材作成において重要視すべき機能に基づいて各ソフトの可用性を比較した結果、いずれにもツールとしては改良の余地があることが明らかになった。また、改良に際しては、ロービジョン者用の教材を効率的に作成するという視点からの積極的な提案が必要との認識を得た。
【結論】
ロービジョン者用の教材作成では、効率的に文字拡大やファイル変換ができることが求められる。また、その作業には多くの人が関わることから、ツールは誰もが簡便に利用できることが望ましい。そうした視点から、今回試用したソフトについての具体的な改良事項を提案し、その実現を図ることとした。