視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第21回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
会議情報

ポスター発表
三次元音響による聴覚空間認知訓練システムにおける位置・姿勢計測精度の改善
*関 喜一三浦 貴大岩谷 幸雄大内 誠
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 96

詳細
抄録

【背景・目的
 視覚障害者は、視覚情報に頼ることが困難であるため、触覚や聴覚などの残存感覚を頼りに環境を認識している。特に、全盲の視覚障害者は、周囲環境中の発音物体および非発音物体の存在や距離を、音情報によって知覚できる。このような聴覚による空間情報認知の能力が高まることで、視覚障害者にとっての移動がより行い易くなるはずである。
 空間情報認知の訓練は、歩行訓練士によって行われる。訓練対象者は目的地への移動という課題を与えられ、環境認知(周囲環境中の物体と自身の相対位置を把握)と身体運動(ある目的地点へ身体を動かす)の方法を習得する。しかし、歩行訓練の対象者が全国に約20万人であるのに対し、訓練士は約500人足らずで、その実働数は約半数である。そこで、訓練士の負担を軽減し、簡易的かつ効果的に聴覚による空間認知訓練を安全に行える手法が必要である。
 そこで筆者らは、聴覚による空間知覚能力の訓練システムを提案し、開発を進めてきた。本システムは訓練者の頭の向きに応じて、訓練音を仮想的にヘッドホン提示できる。実環境での歩行訓練を行う前にこの装置を用いることで、訓練者の危険や恐怖心を軽減できると考えられる。本システムは視覚障害リハビリテーションの現場に、ソフトウェアとして提供され、臨床での効果検討がなされている。
 前回の本研究発表大会においては、筆者らは実用/普及に耐えうる位置・姿勢センサについて調査し、各センサの実装指針について述べた。しかし、どのセンサにおいても、長時間の利用時では誤差が蓄積されることが分かった。そこで本研究では、長時間のセンサ使用時における誤差(ドリフト成分)の蓄積を軽減するための、フィルタリング技術の実装を目的とする。

【手法・進捗状況】
 姿勢検出におけるフィルタリング手法についてMatlab上でシミュレーションを行った。検討対象は、姿勢(Euler角)検出に当たっての加速度/ジャイロセンサの出力データ列である。時間変化に対応するフィルタとして、拡張カルマンフィルタ(EKF)、Unscentedカルマンフィルタ(UKF)について検討した。この結果、いずれのフィルタを用いる場合でも、ドリフト成分を抑制できることが分かった。本発表ではこれらの結果について述べた上で、システムへの実装状況について報告する。

著者関連情報
© 2012 視覚障害リハビリテーション協会
前の記事 次の記事
feedback
Top