抄録
ガイドヘルプサービスを利用する視覚障害者の大多数は歩行訓練士による歩行訓練を受けていない。さらに、歩行訓練士やその他の晴眼者によるガイドヘルプの受け方を学んでいない。
にもかかわらずガイドヘルパー(移動支援従業者、同行援護従業者)となるために学ぶ技術は視覚障害者がガイドヘルプの受け方を学んでいることを前提にしている。
そのため、現場においてガイドヘルパーが養成研修で学んだ行動を視覚障害者が取れないことによる問題が生じている。
例えば、ドア(狭い所)を通過するとき、ガイドヘルパーは視覚障害者が障害にぶつからないように腕を背中側に回す。にも関わらず、ドアにぶつかってしまう人が少なくない。回り込む程度がわからないためであったり,意味が理解できず背中側に回り込もうとしないためなどが考えられる。
そこで、NPO法人視覚障がい者しろがめは晴眼者によるガイドヘルプの受け方を学んでいない視覚障害者を前提としたガイドヘルプ技術の必要性を示し、場面ごとの技術を提案する。
狭い所を通過するとき、ガイドヘルパーは腕を後ろに回す代わりに、ぶつかりそうな箇所に視覚障害者の手を導くことを提案する。こうすることにより、視覚障害者はぶつかりそうな箇所を自ら避けることができる。
つまり、ガイドヘルプの受け方を学んでいない人(前記したガイドヘルパーが腕を背中側に回した意味が理解できない人、背中側に回り込む程度がわからない人、さらに身体機能の関係で背中側に回れない人など)も、障害にぶつからずに狭い所を通過することができる。
参考資料
村上琢磨、関田巖著:目の不自由な方を誘導する ガイドヘルプの基本 第2版、文光堂、2009