2004 年 14 巻 1 号 p. 3-10
本論文では青果物市場を対象とした人工市場の構築を行う.青果物市場には,3種類の異なる特性を持つ取引形態が併在する.提案する人工市場モデルではこれらの取引形態をそれぞれにモデル化し,各エージェントが需給便益や費用便益を向上させるために参加取引形態を選択することとした.このようにミクロレベルのモデル化を行うため,従来のマクロ集計的な時系列解析では行うことのできなかった分析が可能となる.
シミュレーション結果のうち,価格変動率と各取引形態の割合を現実のデータと照らし合わせることにより,高い現実市場再現性を確認できた.そこで,各取引形態のエージェントの要因に対する重みを調べることにより,各エージェントにとっての取引形態の位置づけがわかった.さらに,取引形態割合とモデル設定との関係を調べることにより,需要の増加がセリ取引の減少を生じさせるという現象を説明できた.