シミュレーション&ゲーミング
Online ISSN : 2434-0472
Print ISSN : 1345-1499
14 巻, 1 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
巻頭言
一般論文
査読論文
  • 辻岡 卓, 山本 耕司
    2004 年 14 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    本論文では青果物市場を対象とした人工市場の構築を行う.青果物市場には,3種類の異なる特性を持つ取引形態が併在する.提案する人工市場モデルではこれらの取引形態をそれぞれにモデル化し,各エージェントが需給便益や費用便益を向上させるために参加取引形態を選択することとした.このようにミクロレベルのモデル化を行うため,従来のマクロ集計的な時系列解析では行うことのできなかった分析が可能となる.

    シミュレーション結果のうち,価格変動率と各取引形態の割合を現実のデータと照らし合わせることにより,高い現実市場再現性を確認できた.そこで,各取引形態のエージェントの要因に対する重みを調べることにより,各エージェントにとっての取引形態の位置づけがわかった.さらに,取引形態割合とモデル設定との関係を調べることにより,需要の増加がセリ取引の減少を生じさせるという現象を説明できた.

  • 渋谷 和彦
    2004 年 14 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    ここでは,エージェントシステムを活用した社会心理学研究の意義と可能性,そしてこれらを踏まえた展望を探る.特に,①人工社会システムのような社会的シミュレーション研究,②仮想世界と現実世界へのエージェント技術の適用について探究することを試みる.社会心理学とは,言うまでもなく,人間とその社会集団や社会システム,及び相互作用過程を扱う研究領域としてのディシプリンであると思われる.多くの研究分野,領域,研究手法が存在し,その概念的,実証的進展などがなされてきている.研究手法の大きな支柱は,実験法,調査法,観察法,文献研究などがあげられる.そして,最近の動向として,シミュレーション研究や,メディア環境における人間行動の理解を巡る研究が行われてきている.ここでは,これらの基底となるエージェントシステムの社会心理学研究への適用の意義と,それらの可能性を探っていく.

閲読論文
  • 加藤 文俊, 荒井 祐介
    2004 年 14 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    本論文は,2003年8月に開催された第34回国際シミュレーション&ゲーミング学会(ISAGA 2003)の全体テーマ「シミュレーション&ゲーミングの社会的貢献と責任(Social Contributions and Responsibilities of Simulation and Gaming)」をふまえ,日本シミュレーション&ゲーミング学会(JASAG)のこれまでの歩みを学会誌『シミュレーション&ゲーミング』および全国大会発表論文抄録集の掲載論文からふり返り,わが国におけるシミュレーション&ゲーミング研究の動向を概観するものである.JASAGにおける凋査・研究活動をふり返ることによって,学会としてのアイデンティティを再確認することは,あらたな隣接領域との接点や手法の適用可能性について考え,社会へのメッセージ性を高めていく上で,きわめて重要だと言えるだろう.現時点では限定的な結果の報告にとどまるが,「JASAGの過去,現在,未来」について語るきっかけとなる,基礎的な情報共有を目指すものである.

  • Jan H. G. KLABBERS
    2004 年 14 巻 1 号 p. 28-37
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    During the 34th annual, international conference of the International Simulation And Gaming Association at Kazusa Akademia Park, Chiba, Japan, the first day was dedicated to ISAGA/JASAG Symposia with as special topics, The past, present, and future of JASAG and The contribution of JASAG to Simulation & Gaming. Both symposia offered a broad perspective on the prevailing simulation and gaming theories and methodologies in Japan. That review made clear that the house of simulation and gaming accommodates two different communities that arc living-apart-together. The related communities of observers, and communities of practice form a so-called LAT-relationship. The field of simulation and gaming can only advance as a meta-discipline, if both communities are willing to enact a process of cross-fertilization. JASAG is in a unique position to embark on a long-term project of cross-fertilization between both communities. Unique in the sense that to my knowledge no other gaming and simulation association in the world has such a strong and vital constituency grounded both in the communities of observers and the communities of practice. In this paper, I offer a framework and a strategy for such an approach.

特集論文「地域づくりのS&G」
閲読論文
  • 井門 正美
    2004 年 14 巻 1 号 p. 40-52
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    今,学校では,児童生徒の「生きる力」を育成するために総合的な学習の時間が新設され,作業や体験,問題解決的な学習が重視されている.筆者は「生きる力」を「社会的実践力」と規定しているが,この社会的実践力を学校教育で育成するためには,学校は少なくとも2つの課題を克服しなければならない.すなわち,第1に,学校教育において知識と行為の統一的な学習を実施することであり,第2に,社会を直視する学習を実施することである.これまでの学校教育は覚えさせることばかりに力を注ぎ,覚えたことを行為に結びつけることを怠ってきた.その上,学校は学校を取り巻く地域社会の問題を機敏に捉えてアクションを起こすことにも無関心であった.

    筆者は,社会系教科教育(社会科,公民科,地理歴史科)の立場から,このような学校教育の現状に変革をもたらそうと考える.本論稿では,社会的実践力を培うために知識と行為の統一的な学習を図り,かつ,児童生徒が直面する社会問題を取り上げる教材開発とその実践について論述する.すなわち,筆者が構築した役割体験学習論から我々に差し迫った社会問題である市町村合併を取り上げ,教材化とその実践を行う.具体的には,「ゲーミング・シミュレーション教材『市町村合併』」を作成し,この教材を用いた実践を行い,教材の意義や学習効果について考究する.

  • 門間 敏幸, 安中 誠司
    2004 年 14 巻 1 号 p. 53-65
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    現在,中央集権的な農業・農村政策の限界が明らかになり,地方の知恵を活かした新たな地域発信型の農業政策が求められている.現在多くの市町村ではこのような背景の中で住民参加型の地域活性化活動を展開しているが,関係機関ならびに住民相互に住民参加に対する経験が少ないため,住民参加システムを効率的に構築し推進することができなかった.

    本論では,農村社会の活性化方向ならびに社会的な決定方式の特徴を整理するとともに,農村における住民参加型地域づくりを支援するために開発したTN法ならびに集落シミュレータ(シムルーラム)の特徴を提起した.さらに,農村住民を対象とした地域づくり支援に有効に活用できるS&Gが備えるべき条件を整理した.

  • 木谷 忍
    2004 年 14 巻 1 号 p. 66-77
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    地球環境問題の解決に向けて,地域活動と環境教育の重要性が指摘されて久しい.一方で,私たちは,他の地域には負けないグローバルスタンダードに基づいた効率の良い地域開発こそが,豊かな地域生活づくりに寄与するものと思い込んでいないだろうか.人と環境の関係を鑑みると,地域市民にとって,地域環境は自己を見出し照合するものであり,こういった観点から地域開発を進めることが,地域生活の営みにおいてその豊かさに寄与する.しかしながら,地域環境とは何かは,そこに住む市民だけが知る知識なのだが,それは包括的存在であって暗黙知であるため,市民自らそれを意識するしか方法はない.本研究では,その意識啓発を地域文脈の想起と捉えて,これを促すようなRPGを提案し,実験を通して効果を分析した.それによれば,公的な仕事に従事する市民において地域文脈想起が期待できることが示唆される.

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