筑波大学経営システム科学専攻では,社会人学生を対象に,ビジネスゲームの実行と参加者によるゲームの設計・実現とからなる教育コースを実施している.ビジネス・シミュレーションは,ケースメソッドと並ぶビジネス教育の実践的な方法論である.しかるに,これまでのところ,両者を結ぶ研究事例は少ない.本稿では,筑波大学のビジネス・シミュレータBMDL/BMDSを利用した,両者を統合するための実践研究の結果を報告する.具体的には,わが国のビール業界で生じた経営意思決定問題を題材に,新たにゲームを開発し,その実践・評価について議論する.開発したゲームは,経営トップの定性的な意思決定事項と,従来のビジネスゲームが得意とする経営ミドルによる定量的なオペレーション領域での意思決定とを組合せた「社長のジレンマモデル」である.これを用いて学生と経営者に対して実験を行い,提案手法の有効性を確認した.