木稿は,ゲーミングシミュレーションに関わる研究または実践において,考慮すべき倫理問題を議論している.基本的に日本における先行研究を批判する立場にある.その視点を提示することによって,倫理問題の理解が深まることを期待している.
本稿では,最初に定義すべきは,プレーヤは「思考する人間(ホモサピエンス)」である,と主張する.それ故に成長するプレーヤを現代社会における生涯学習者として定義している.医学系学会あるいは心理学系学会におけるプレーヤを被験者と見なすこととは,相いれない.プレーヤとゲーミングの研究者または実践者とは,この意味で対等である.これらは,倫理問題を論議する前に設定すべき公準である.