2011 年 21 巻 1 号 p. 1-12
本稿では『クロスロード』を,シミュレーション構築の一部をプレーヤに委ねる仕組みとして論じる.はじめに,『クロスロード』は,体験談をもとしたゲーミングシミュレーションであるが,シミュレーションを体験談に対応した知識表現の一形態として定義し,シミュレーションの作り手と受け手という2つの立場を想定した上で,体験談,ゲームのプレー,『クロスロード』,シミュレーションの構築と,シミュレーションの提供方法を類型化する.次いで,『クロスロード』が,既に作り手によって定式化された関係を持つゲームのプレーと,自らが関係を定式化するシミュレーションの構築との間に位置することを述べる,最後に,シミュレーション構築の一部をプレーヤに委ねる仕組みとしての『クロスロード』は,ゲーミングシミュレーションにおいて,ゲームのプレーから,問題の解法構築へとプレーヤを誘導する思考支援ツールであることを述べる.