本研究は,現場のエキスパートの知見を活用した「セルフサービス機器利用の意思決定モデル」を提案し,セルフサービス利用率の向上ならびに業務オペレーション双方に効果的なシナリオを検討する.研究対象は,本格的に普及が進んでいない国際線ターミナルにおける,フルサービスキャリア(FSC)利用旅客向けのセルフサービスチェックイン機器とする.セルフサービス機器利用の意思決定については,収集が可能な実測データに加えて,エキスパートの知見をファジィ推論としてモデル化し,それらに基づいて旅客エージェントがお互いに混雑状況を推定しながら搭乗手続き方法を選択するエージェントベースモデルを構築する.航空会社の搭乗システムから抽出した実際の搭乗データを用いて,実測値との比較を行うことでモデルのパラメータ推定を行い,現実社会を写像した蓋然性の高いモデルを探索する.また,これらのモデルを用い,空港スタッフやチェックイン機器設置数といった生産財を様々に変化させることで,運営コストの抑制を考慮しながら,セルフサービス機器の利用率向上とサービス品質向上の両者のバランスが取れる効率的な業務オペレーションについて,シナリオ分析を行う.さらに,係員の訓練コストや市場との競争の概念を導入することで,当該モデルのビジネスゲームへの発展性について議論する.