2021 年 31 巻 1 号 p. 50-59
本論文では,シミュレーション&ゲーミングを使ったオンライン授業の例を紹介する.紹介するのは主にThiagiの手法(Thiagarajan 2005)によるものである.1つは,オンライン授業においてゲームを実施した事例である.もう1つは,授業のレポート課題に対話性を導入したものである.COVID-19の流行により,日本の大学は多くの授業をオンラインで実施せざるを得なくなった.COVID-19流行以前には,著者らは対面で実施するようなゲームを教育目的で導入していた.本来対面で行うゲームをオンライン授業に転用するにあたっては工夫が必要であった.結果として,Cisco Webex Meetingシステムを使ったオンライン授業において,対面のゲームを,対話性を維持しつつ,オンラインで実施することができた.また,講義の中でゲームを使うのではなく,レポート課題をゲームのようにすることで対話性を維持するように試みた.1年の実施経験を経て,物理的に対面していなくても,対話性を維持しつつ,授業を実施することは可能であるという結論に至った.本稿の中では,実施によって明らかになったこれらの実践の長所や短所についても述べる.