2022 年 32 巻 2 号 p. 35-47
忌避施設の立地をめぐっては,負担が集中する立地地域の住民が当事者とみなされ,その権利を他のアクターよりも優先すべきとの判断がなされやすい.このような判断は当事者の優位的正当化と定義される.しかし忌避施設はNIMBYの構造を内包するため,多くの人々が当事者の優位化を自明視すれば,忌避施設に対する拒否の連鎖によって社会全体での共貧化が生じうる.非合理的な側面を持つ当事者の優位化が自明視される背景には,直観的な判断を促す道徳基盤の影響が考えられる.本研究では「Web型・誰がなぜゲーム(Web-WWG)/地層処分場版」を用いて,地層処分場のサイト候補地の地元住民と原発立地自治体の住民を設定した.前者は地層処分場の立地によって被害が集中し,逆に後者は,立地しない場合に被害が集中する.利害の対立する2種の当事者が併存する多極化構造の下では,前者に対する優位化が抑制された.また地元住民の正当性に対する道徳基盤の影響が確認された.当事者の優位的正当化が直観的過程から発生する可能性について,考察した.