シミュレーション&ゲーミング
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査読論文
ゲーミング実験によるエネルギー転換への炭素税の影響評価
仲出川 裕太 鈴木 研悟
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2024 年 33 巻 2 号 p. 31-41

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抄録

自由市場におけるエネルギー転換問題は,化石燃料を使い続けることによる私益と環境負荷の低い代替エネルギーを選ぶことによる公益とが対立する社会的ジレンマとみなすことができる.このジレンマ状況下でエネルギー転換を促すため,化石燃料の消費に対して課税する炭素税が世界中で実施・検討されている.本研究は,エネルギー需要家が化石燃料と代替エネルギーのいずれかを繰り返し選択する状況を想定し,炭素税が代替エネルギーの使用量を増やせるかどうかを実験的に調べた.具体的には,需要家によるエネルギー選択を模擬するマルチプレイヤーゲームを,無税・低税率・高税率の3条件において実験協力者にプレイしてもらった.低税率・高税率条件における代替エネルギー消費量を無税条件と比べると,消費量は税率が十分に高くなるゲーム終盤には増加するものの,税率が低いゲーム前半にはかえって減少しており,炭素税がエネルギー転換の開始を遅らせていた.この結果は,低税率の炭素税が化石燃料を使い続ける免罪符として機能してしまう可能性を示唆している.

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© 2023 特定非営利活動法人日本シミュレーション&ゲーミング学会
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