2025 年 45 巻 3 号 p. 184-197
本研究の目的は、ウクライナの高等教育機関における心理支援の歴史的進展および現行の課題について日本語資料を得ることである。法的文書、国家機関の報告書、各種統計、学術データベースから選択された研究論文を対象にレビューを行った。ウクライナは独立した1991年に教育制度における国家心理サービスを設置したが、高等教育においてはほとんどの機関でその実態が伴っていなかった。2009年以降に行われた法整備は、高等教育機関における心理サービスの設置やその在り方に関する議論を促した。心理サービスの中心的な役割として、学生および教員の適応支援、学生の職業人としての成長支援および人格成長支援が検討された。また、心理的アセスメント、矯正教育、回復支援、予防教育、啓発活動、心理的予測評価の業務を含む多職種連携的で包括的な支援プログラムが重視された。これらの取り組みは特定の問題に対処するだけでなく、個人や組織の発達促進に重点を置いている。一方、2022年の全面侵略戦争により、高等教育における心理サービスは存続の危機に瀕している。現在も国内外の支援および協働により、その機能の回復と発展に向けた取り組みが続いている。