抄録
中国伝統演劇は、多様な芸術的要素が集まった総合芸術であり、教育研究の分野にも興味深い研究材料を提供するが、これまで教育現場の実践に焦点を当てた研究はほとんど行われてこなかった。本報告では、教育人類学的な観点から、「口伝心授」と呼ばれる口伝えの教授・学習方法に注目して、中国伝統演劇の技や知識がどのように教授・学習されているかを取り上げる。具体事例として、報告者がこれまで調査してきた秦腔と呼ばれる中国西北地域の地方劇に注目し、秦腔を専門に教える演劇学校で、中核的な教育実践である口伝心授を通して芸の教授・学習がどのように行われているか、という点に迫りたい。