人類学は哲学の概念を応用して民族誌に記述された問題を説明しようとしてきた。応用人類学が時の公共政策を受け入れて公共政策が既に対象化した社会の問題の解決を目指したのと同様に、人類学が既存の哲学の諸概念を使って社会現象を説明することの限界を本発表は取り上げる。このような哲学と人類学の非シンメトリックな関係をシンメトリックな関係にするために、人類学は何をしなければならないのか。私は南インドの不可触民を起源とするある女神寺院の高級化を事例に使い、ハーバーマスの公共圏の議論を応用して高級化の説明を試みる人類学的説明の限界を示すと同時に、民族誌的なデータを使って、公共圏の拡大の議論に内在する限界に光を当てることを試みる。