本発表は、徳島県/賢見神社で行われるお祓い・御祈祷を「ケアの実践」という視点から論じる。お祓い・御祈祷は、実践する側と受け手側との関係性を起点にし、様々な人間・非人間の絡み合いを発生・形成させるものであるといえる。本発表では、その結果として現れる受け手の「治癒」や「ウェルビーイング」という状態に注目する。まず治癒過程で、本人の情動・感覚を方向付ける「情動的技術」が中心的役割を演じていることを明らかにする。次に受け手のウェルビーイング、つまり「神様に守ってもらっている」と感じる状態を保つことは、受け手の情動を中心に、様々なアクターの係わり合い・相互作用が繰り返すことで、特定の絡み合いが固定化されることによって実現している点を、事例分析により明らかにする。そして、憑依の場におけるケアの実践とは、その場と生成の可能性を発生させることであると論じる。