抄録
要 旨
背景:喫煙は、内科慢性疾患の発症要因として重要であり、禁煙は治療の基本となる。しかし、実際の診療現場では、受
診時に禁煙指導を行っても喫煙継続する内科慢性疾患患者が存在し、しばしば疾患管理に難渋する。近年、禁煙啓発や指
導において、肺年齢測定の有用性が報告されてきている。このため、喫煙継続内科慢性疾患患者に対して禁煙指導を行う
際、肺年齢測定を加えることの有用性について検討した。
方法:内科慢性疾患と診断され、埼玉協同病院内科専門外来に6ヶ月以上の定期通院歴を有する症例の内、2015年4月時
点において喫煙継続している123例を対象に、禁煙の準備性を質問表により、無関心期、関心期、熟考期、準備期に分類
し、禁煙ステージを評価した。対象を肺年齢測定群 (受診時、肺年齢測定・説明し、禁煙指導を行う群:58例) と、非測
定群 (禁煙指導のみを行う群:65例) の2群に分け、次回外来受診時における禁煙ステージ分類の変化を調査した。
結果:次回外来時に禁煙ステージの確認ができた症例は、肺年齢測定群、非測定群でそれぞれ、58例、52例であった。両
群で、禁煙指導時の年齢、性別、喫煙歴、基礎疾患や禁煙ステージに差を認めなかった。肺年齢測定群における肺年齢と
実年齢の差は、22.5±11.3歳であった。肺年齢非測定群52例中、5例で禁煙準備性の進行を認めたのに対し、肺年齢測定
群では、3例が禁煙、11例で禁煙準備性の進行が確認された (p = 0.078)。基礎疾患別の解析では、呼吸器慢性疾患患者
の肺年齢測定群のみで有意に禁煙準備性の進行が確認された。
考察:肺年齢測定は、喫煙継続呼吸器疾患患者において、禁煙の動機付けに有用であると考えられた。今後、多施設によ
る研究を行い、本結果を検証していくと共に、他疾患においても禁煙準備性の進行に有用な手法を開発、検討することが
重要であると考えられた。