禁煙科学
Online ISSN : 1883-3926
vol.10 巻, 02 号
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  • 髙橋 直子, 松野 純男, 伊藤 栄次, 高橋 裕子
    2016 年 vol.10 巻 02 号 p. 1-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/06/12
    ジャーナル オープンアクセス
    要 旨
    目的:タバコの煙には約4000種類の化学物質が含まれており、喫煙は多くの疾患の危険因子であるため、大きな課題であ る。薬剤師にとって禁煙支援は医療費削減および国民の健康維持をサポートする上で重要な業務となっている。そこで、 薬剤師に喫煙や禁煙に関する意識調査を行って問題点を抽出し、禁煙支援に必要なものが何か検討した。
    方法:201X年および、201X+1年に某県薬剤師会禁煙支援薬剤師養成研修会に参加した薬剤師を対象に、『コーチングを活 用した禁煙支援プログラム』の講義後、禁煙支援に関する意識調査を5段階尺度および自由記述形式で実施した。回収し た意識調査の回答結果の項目分析を行うとともに、因子分析およびクラスター分析を用いて、各設問間の関連性について の検討を行った。単純集計処理後、因子分析およびクラスター分析にはR-3.2.3を使用し、禁煙支援薬剤師の意識および 禁煙支援時の問題点を抽出した。
    結果:415人(回収率97.5%)から得られた意識調査を解析した。単純集計では、禁煙患者が禁煙支援薬剤師に相談する 内容は、「本当に禁煙できるのか」という禁煙に対する不安や、「何度も失敗して辛い」という苦しみが約40%を占めて いた。また、「禁煙支援時に配慮が必要なこと」に回答があった「傾聴」「励まし」というコーチングの技法を活用した コミュニケーションは不安や苦しみに非常に有効であることが示された。因子分析では、5つの因子(禁煙支援、健康へ の影響、タバコの被害、防煙教育、「禁煙すべき」)が抽出された。また、クラスター分析から回答者を3つのグループ ①禁煙支援に積極的、②禁煙支援の必要性は感じているが積極的ではない、③その他と分類することができた。
    結論:薬剤師の抱えている問題点を抽出することができた。その結果、薬剤師は患者ひとりひとりにあわせたテーラーメ イドのコミュニケーションを円滑にとれるようにトレーニングをする必要があると考えられた。
  • ―喫煙状況別解析―
    尾崎 裕香, 高橋 裕子, 小見山 麻紀, 和田 啓道, 浅原 哲子, 山陰 一, 船本 雅文, 砂川 陽一, 森本 達也, 飯田 真美, ...
    2016 年 vol.10 巻 02 号 p. 13-27
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/06/12
    ジャーナル オープンアクセス
    要 旨
    目的:日本における受動喫煙の健康被害と全面禁煙に関する意識について明らかにするために国際的調査の一つとして日 米比較を行った。前報1)で受動喫煙の健康被害に関する知識度は日本の方がアメリカより低い一方、関心度は日本の方が アメリカより高いことを報告した。本報告ではさらに喫煙状況別に解析を行い、異なった喫煙状況において受動喫煙の健 康被害と全面禁煙に関する意識に日米で差があるかについて調査した。
    方法:2015年2月3日~2月12日の期間に日本在住の日本人1000人とアメリカ在住のアメリカ人の1000人を対象とし、イン ターネットによるアンケートを実施した。結果:知識度は日米両国において現在喫煙者が非喫煙者より高かった。日米の 比較では非喫煙者、過去喫煙者、現在喫煙者すべての喫煙状況において知識度は日本がアメリカより低かった。一方、関 心度は日米両国とも非喫煙者の方が現在喫煙者よりも高かった。日米の比較において関心度は全体的にみると日本の方が アメリカより高かったが、現在喫煙者に限っては日本の方がアメリカより低い傾向にあった。「2020年オリンピック開催 都市である東京都も強制力のある受動喫煙防止法または条例を整備して欲しいと思いますか。」という質問に対して、日 米ともに約8割が肯定的回答であり、非喫煙者のほうが現在喫煙者に比べてより肯定的であった。しかし、アメリカの現 在喫煙者は肯定的である一方、日本の現在喫煙者は否定的であった。
    結論:日本の非喫煙者は日本の現在喫煙者よりも知識度が低く、アメリカの非喫煙者と比較しても知識度は低く、日本の 非喫煙者は受動喫煙の健康被害に対する知識度が顕著に低いことが明らかとなった。また日本の現在喫煙者は、アメリカ の現在喫煙者と比較すると知識度は低く、関心度も低い傾向にあり、全面禁煙にも否定的で、日米の姿勢の違いが顕著で あった。喫煙状況別にみても日本の受動喫煙の情報提供は不十分であり、今後、日本において受動喫煙の健康被害と全面 禁煙の必要性について情報発信を積極的に行う重要性が示唆された。
  • 木村 美穂, 安藤 克利, 照屋 奈保美, 白子 弥生, 新島 麻耶, 小池 昭夫, 高橋 和久, 土生 みき子
    2016 年 vol.10 巻 02 号 p. 28-32
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/06/12
    ジャーナル オープンアクセス
    要 旨
    背景:喫煙は、内科慢性疾患の発症要因として重要であり、禁煙は治療の基本となる。しかし、実際の診療現場では、受 診時に禁煙指導を行っても喫煙継続する内科慢性疾患患者が存在し、しばしば疾患管理に難渋する。近年、禁煙啓発や指 導において、肺年齢測定の有用性が報告されてきている。このため、喫煙継続内科慢性疾患患者に対して禁煙指導を行う 際、肺年齢測定を加えることの有用性について検討した。
    方法:内科慢性疾患と診断され、埼玉協同病院内科専門外来に6ヶ月以上の定期通院歴を有する症例の内、2015年4月時 点において喫煙継続している123例を対象に、禁煙の準備性を質問表により、無関心期、関心期、熟考期、準備期に分類 し、禁煙ステージを評価した。対象を肺年齢測定群 (受診時、肺年齢測定・説明し、禁煙指導を行う群:58例) と、非測 定群 (禁煙指導のみを行う群:65例) の2群に分け、次回外来受診時における禁煙ステージ分類の変化を調査した。
    結果:次回外来時に禁煙ステージの確認ができた症例は、肺年齢測定群、非測定群でそれぞれ、58例、52例であった。両 群で、禁煙指導時の年齢、性別、喫煙歴、基礎疾患や禁煙ステージに差を認めなかった。肺年齢測定群における肺年齢と 実年齢の差は、22.5±11.3歳であった。肺年齢非測定群52例中、5例で禁煙準備性の進行を認めたのに対し、肺年齢測定 群では、3例が禁煙、11例で禁煙準備性の進行が確認された (p = 0.078)。基礎疾患別の解析では、呼吸器慢性疾患患者 の肺年齢測定群のみで有意に禁煙準備性の進行が確認された。
    考察:肺年齢測定は、喫煙継続呼吸器疾患患者において、禁煙の動機付けに有用であると考えられた。今後、多施設によ る研究を行い、本結果を検証していくと共に、他疾患においても禁煙準備性の進行に有用な手法を開発、検討することが 重要であると考えられた。
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