抄録
要 旨
導入:受動喫煙は重大な健康リスクであり、その影響は未成年では特に大きい。しかし未成年の非喫煙者と、成人した喫
煙者が混在しうる大学の全面禁煙率は、静岡県内の大学では27 キャンパス中12 キャンパス (44%) にとどまっており、
多くのキャンパスでは喫煙所が設置されている。そこで我々は大学内に喫煙所を設置している際の周囲への影響を明らか
にするため、静岡県立大学の草薙キャンパスにおいて喫煙所周辺での浮遊粒子濃度の測定を行った。
方法:静岡県立大学草薙キャンパスに2 か所ある喫煙所で、それぞれ大気中浮遊粒子濃度測定を行った。測定には柴田社
製のデジタル粉じん計LD-3K2 を用いた。測定は、晴れた風の少ない穏やかな日の10 時から18 時の間に行った。測定値
の評価は環境省の「環境基本法」及び「注意喚起のための暫定的な指針」をもとに行った。
結果:静岡県立大学での浮遊粒子濃度は、囲いのない屋外の喫煙所では、最大値1,830 μg/m3、環境基準値の35 μg/m3 以
上を1 日9 回以上記録した。喫煙所より5 m 離れた場所でも、最大値は77.5 μg/m3、35 μg/m3 以上を1 日2 回記録した。
屋内の喫煙室の扉近くでは最大113 μg/m3 を記録した。環境基準値35 μg/m3 も1 日5 回以上超えており、出入りの多い時
間では、注意喚起のための暫定指針である70 μg/m3 以上を1 日3 回記録した。
考察:今回の調査により、喫煙所周囲を通るだけで重大な健康リスクを受ける恐れがあることが示唆された。大学は市民
にも開かれた場所であり、全面禁煙を実施し、誰にとっても安全なキャンパスづくりを目指すべきである。