抄録
背景:1999年5月、ニコチンパッチは、本邦初の健康保険非適用の禁煙貼付薬として発売され、2006年6月には、ニコチン依存症の患者に限定し、一部保険適用できることとなった。その結果、より多くのニコチン依存症の禁煙希望患者に対して使用されるようになってきた。そこで、ニコチンパッチを用いた禁煙治療の短期および長期の成功率(1年禁煙率)ならびに影響する因子について検討し、今後の治療に反映させることとした。
方法:2006年6月から2007年5月に、当院にてニコチン依存症管理料を算定した105例を対象とした。検討項目は短期および1年禁煙率、患者背景や喫煙状況などの因子が禁煙率に及ぼす影響とした。
結果:禁煙治療終了時に禁煙が継続していたのは89例で、短期禁煙率は84.8%であった。それぞれの禁煙成功に及ぼす影響因子をロジスティック回帰分析にて検討したところ、TDSスコアが高いと禁煙率が低くなる傾向(オッズ比0.70、95%信頼区間2.18-8.22)を認めた。禁煙治療を開始してから1年が経過した61例のうち、1年後に禁煙継続が確認できたのでは49例で、1年禁煙率は80.3%であった。各因子を同様に検討したところ、女性で有意に1年禁煙率が低かった(オッズ比34.69、95%信頼区間1.23-971.57)。また、TDSスコアが高い群、基礎疾患のある群では禁煙率が低い傾向にあった。
結論:1年禁煙率に好影響を及ぼす因子として、男性が特定された。短期の検討では性別は有意な因子ではなかったことから、短期的には性別は禁煙率に影響を及ぼさないが、女性ではそれを維持するのが難しいことが示唆された。TDSスコアの高い群では1年禁煙率が低くなる傾向があり、ニコチン依存症の程度が高い症例では1年禁煙率が低下するのは既知の通りであった。