禁煙科学
Online ISSN : 1883-3926
7年前に行った防煙授業に関してのアンケートを実施して
松本 武敏宮本 栄子古木 なおみ山内 るみ
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2011 年 vol.5 巻 09 号 p. 11-13

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抄録
【はじめに】
 2004年(平成16年)に市町村合併前の波野中学校で防煙授業を実施した。きっかけは、「健康くまもと21」という熊本市の活動で、医師としてボランティアで禁煙活動に参加していた際の繋がりで、波野村の一人の行政保健師と知り合ったことにある。2005年(平成17年)に阿蘇市(波野村、一の宮町、阿蘇町合併)となったが、その後も行政保健師のサポートにより、阿蘇市内の小中学校で防煙授業を継続し、今年度は阿蘇市(人口約2万8千)内全域に拡がっている。
 今回、今後の防煙授業の継続への参考にすることを目的に、最初に授業を実施した波野中学校卒業生(現在20歳から22歳)に授業実施7年後における状況を郵送で無記名自記式質問紙調査を実施したので報告する。
【結 果】
 アンケート送付対象は、男性23名、女性33名の計56名。そのうち回答のあった29名(男性10名、女性19名:回答率52%)からのデータを集計した。 家族には23名(79%)の喫煙者がいた。(図1)
 回答者の中で喫煙者は男性2名(7% )で、吸い始めたのはいずれも20歳で、開始理由は「同級生に誘われて」「特に理由なし」であった(図2)。
 現在は非喫煙者で、過去に喫煙経験のあるのは2名(7%)で、止めた理由は「健康によくないから」「タバコ代が高いから」であった(図3)。まったく喫煙経験のない非喫煙者は24名(未回答1名)で、吸わない理由は「未成年だから」「健康のために」「興味がないから」「嫌いだから」「吸いたいと思わないから」「臭い」「害があると知っているから」「妊娠中だから」であった。喫煙を勧められたことがあったのは12名(41%)であり(図4)、禁煙アドバイスをしたことがあるのは20名(69%)であった(図5)。防煙授業については、24名(83%)が役立ったと回答した(図6)。
【考 察】
 アンケートを返信しなかった集団で喫煙者が多く含まれる可能性があるが、現在喫煙者が29名中2名(7%)と、全国平均に比べて少ないことは注目に値する。家族に喫煙者がいた率は全国の他の調査と大差ないことから、たばこの害に関しての認識を持って成人を迎えているなど、防煙授業が有効であった可能性がある。さらに喫煙者に対して、69%が禁煙アドバイスをしていたことからも、7年前に受けた防煙授業は役立っていたものと思われた。自由記載欄では「双子の写真は印象に残った」など防煙授業の情報提供において画像が有効である意見がみられた。なお周囲から喫煙を勧められた者が41%もいたことは、社会全体の取り組みとして今後の課題である。
 本調査の限界としては、限定された地域での小規模な調査であること、対照群を設けていないこと、郵送による調査であり虚偽の申告が除外しえないことなどが挙げられる。しかし、防煙授業の長期成果については、遠藤らによって小学校での喫煙防止教育の3年後の成果が報告されている1)ものの、日本国内において成人後における成果の有無についてはほとんど調査がないことから、一定の価値があるものと考える。
【結 論】
 中学校での防煙授業は実施後7年後の調査において有用であることが示唆された。
 周囲から喫煙を勧められた者が多く、社会全体の取り組みとして今後の課題である。
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© 2011 日本禁煙科学会
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