本論では、「風評被害」の実態とその発生メカニズムを論じることに目的がある。
実態を反映させ、定義づけると「風評被害とは、ある事件・事故・環境汚染・災害が大々的に報道されることによって、本来『安全』とされる食品・商品・土地を人々が危険視し、消費や観光をやめることによって引き起こされる経済的被害」のことである。元々は原子力に限定され用いられていた。
概括して、「風評被害」は次のような過程を経る。[1]「人々は安全か危険かの判断つかない」「人々が不安に思い商品を買わないだろう」と市場関係者・流通業者が想定した時点で、取引拒否・価格下落という経済的被害が成立する。[2]「経済的被害」「人々は安全か危険かの判断つかない」「人々の悪評」を政治家・事業関係者、科学者・評論家、市場関係者が考える時点で「風評被害」が成立する。この時点でいわば「『人々の心理・消費行動』を想像することによる被害」である。[3]①経済的被害、②事業関係者・科学者・評論家・市場関係者の認識、③街頭インタビューの「人々の悪評」などが報道され、社会的に認知された「風評被害」となる。[4]報道量の増大に伴い、多くの人々が「危険視」による「忌避」する消費行動をとる。事業関係者・市場関係者・流通業者の「想像上の『人々の心理・消費行動』」が実態に近づき、「風評被害」が実体化する。