2018 年 16 巻 2 号 p. 127-132
本稿は,シミュレーションの検証にモバイル空間統計を用いた研究事例を紹介する.筆者らは現在,巨大災害後に住まいを失った世帯が仮住まいを求めて市町村境界を越えて移動する様子を再現する「巨大災害時疎開シミュレーション」の研究をすすめているが,ここではシミュレーションの確からしさを検証するひとつの手段として,熊本地震を対象としたモバイル空間データ利用による分析を行っている.この結果,特に都市部に疎開する世帯数の推定精度が悪く,シミュレーションに大都市の吸引力や住まいのみならず職業などとの関係も内生化していく必要など,多くの示唆が得られている.